近年、ドバイは移住先として世界中から注目を集めています。その理由は、税制面での優遇やビジネスチャンスの豊富さ、多国籍文化が共存する魅力的な環境にあります。今回は、ドバイ移住のメリットとデメリットをバランスよく解説し、移住を検討するための基礎知識を提供します。
※通貨レートはAED(ディルハム)=40円で計算しています。
ドバイ移住の7つのメリット
まずは、ドバイに移住すると得られる7つのメリットを紹介します。
- 圧倒的な節税
- 治安の良さ
- 移民を歓迎する国づくり
- ビジネスチャンス
- 英語力の向上
- 子どもの国際感覚の向上
- ヨーロッパ・アジア・アフリカへの渡航しやすさ
圧倒的な節税
ドバイ最大の魅力は、税制面での優遇です。
ドバイでは所得税、住民税、キャピタルゲイン税(譲渡所得税)、固定資産税、相続税、贈与税がゼロです。圧倒的な節税メリットにより、高所得者や資産家は大幅な節税が可能です。
たとえば、日本で所得税率が最高45%に達する人でも、ドバイではその負担がゼロになるため、大きな余裕が生まれます。
法人税についても優遇措置があります。ドバイの法人税は9%ですが、一定の要件をクリアすると法人税が免除されます。そのため、起業家やオンラインビジネスを行うフリーランサーがドバイを拠点とするケースが増えています。
治安の良さ
ドバイの治安の良さは、移住者にとって重要なポイントです。犯罪発生率が低いだけでなく、公共の安全対策が徹底されているため、24時間いつでも安心して外出できます。
市内には監視カメラが広範囲に設置されており、警察の巡回も頻繁です。また、ドバイ警察は最新の技術を活用した犯罪予防対策を実施しており、迅速な対応が可能です。
移民を歓迎する国づくり
ドバイは移民が全人口の約85%を占める多国籍都市です。このような環境は、移住者にとって非常に魅力的です。政府は外資系企業の進出を積極的に支援し、多くのフリーゾーンを設けることで、移民が活躍しやすい仕組みを整えています。
ビザ制度の多様化により、起業家やリタイア後の生活を考える人、さらにはリモートワークを行う人に向けた選択肢が豊富です。移住者がスムーズに生活を始められるような政策が充実しています。
ビジネスチャンス
ドバイは中東の経済ハブとして、新しいビジネスチャンスが豊富な都市です。2021年のドバイ国際博覧会開催以降、テクノロジーやエコロジー、観光業などの分野で多くのプロジェクトが進行しており、起業家にとって絶好の環境です。
ドバイ政府が推進するスマートシティ構想やグリーンエネルギー政策は、世界中の投資家や企業家にとって魅力的です。また、Web3.0(ウェブスリー)やフィンテックなどの最新技術に携わるエリートビジネスパーソンと交流できる場が多く、ネットワークを広げる機会が豊富にあります。
英語力の向上
ドバイでは英語が広く使用されており、日常生活からビジネスシーンまで、英語が主要なコミュニケーション手段となっています。英語に不安がある場合でも、生活を通じて実践的なスキルを身につけられます。
インターナショナルなビジネス環境は、専門用語やビジネス英語を学ぶのに最適です。英語学習に力を入れたい人にとって、理想的な環境といえるでしょう。
子どもの国際感覚の向上
ドバイの多国籍文化は、子どもの教育において大きなメリットがあります。多様なバックグラウンドを持つ子どもたちが集まるインターナショナルスクールでは、世界標準の教育を受けられます。
子どもたちは日常生活の中で異文化に触れることで、国際感覚を自然と身につけられます。宗教や価値観の違いを理解し、多様性を尊重する姿勢が養われるでしょう。
ヨーロッパ・アジア・アフリカへの渡航しやすさ
ドバイの地理的優位性は、頻繁に海外へ渡航する人にとって大きなメリットです。ヨーロッパ、アジア、アフリカの各主要都市に直行便が豊富にあり、ドバイ国際空港を拠点にした移動がスムーズです。出張や旅行の拠点として、これ以上ない利便性があります。
ドバイ移住の5つのデメリット
どんな魅力的な移住先にも、必ずいくつかの課題やデメリットがあります。ドバイ移住も例外ではなく、独特の生活環境や文化的な違いから、移住者にとって負担となる点があります。ここでは、ドバイ移住にともなう5つのデメリットを紹介します。
- 夏の暑さ
- 物価の高さ
- 車社会
- 日本への頻繁な帰国のハードル
- イスラム教の文化・規制への配慮
夏の暑さ
ドバイの夏は、他の地域と比べても極端に暑いことで知られています。5月から9月にかけて、気温は連日40度を超え、場合によっては50度近くに達します。酷暑の環境では、屋外での活動はほぼ不可能となり、日中の外出は避けなければなりません。
夏季は屋内で過ごす時間が増え、日常の自由な行動が制限されがちです。空調が効いた環境が不可欠であり、室内活動を主体としたライフスタイルを余儀なくされます。
また、家族連れの場合、子どもを屋外で遊ばせる機会が少なくなるため、ストレスがたまりやすくなるかもしれません。
物価の高さ
ドバイの生活費は日本と比べて高く、特に家賃や教育費が大きな負担となります。市内の高級住宅エリアでは、1LDKの家賃が月額20万円を超えるのも珍しくありません。家族向けの広い住宅やヴィラを選ぶ場合、その費用はさらに高額になります。
インターナショナルスクールの学費も高額で、年間数百万円に達することがあります。外食費や輸入食品の価格も高く、普段の生活費が想定以上にかさむことがあります。移住初期は生活に必要な家電や家具を購入する費用も含め、大きな出費が発生するでしょう。
車社会
ドバイは、車が移動の中心となる車社会です。公共交通機関としてメトロやバスが整備されていますが、カバー範囲や便数の面で限界があり、移動の自由度を考えると自家用車が不可欠となります。
車を購入する場合、初期費用だけでなく、ガソリン代、保険料、メンテナンス費用なども考慮しなければなりません。駐車場代もエリアによって異なりますが、中心部では高額になることがあります。運転免許を取得するためには、現地のルールに則った手続きが必要です。
ドバイの道路事情にも注意が必要です。高速道路の制限速度は時速120~140kmと非常に高く、運転経験が少ない人にとっては緊張を伴う環境です。このため、ドバイでの車の運転には十分な注意が求められます。
日本への頻繁な帰国のハードル
ドバイと日本の距離は約8,000kmにも及び、フライト時間は直行便で10時間以上かかります。この距離が、頻繁な帰国を難しくする要因となります。航空券の価格もシーズンによっては非常に高額で、年末年始や夏休みの時期にはさらに費用がかさむことがあります。
イスラム教の文化・規制への配慮
ドバイはイスラム教の地域であり、移住者として文化や規制の尊重が求められます。たとえば、公共の場での飲酒や酔っ払った状態での外出は禁止されています。飲酒が許可されているのは、特定のライセンスを持つ施設に限られるため、日本のように気軽にお酒を楽しむことはできません。
ラマダン期間中は、日中の飲食が禁止されるため、外出先での飲食や喫煙が制限されます。この期間は公共施設や職場でも特別な配慮が必要となります。服装についても一定の規範があり、露出の多い服装は避けるべきとされています。
アラブ首長国連邦の法律は非常に厳格であり、違反行為に対しては厳しい罰則が科されます。SNSでの発言や写真の共有に関する規制、公共の場での迷惑行為など、日常の行動にも注意が必要です。このような文化的な違いに馴染むまでには、時間がかかるかもしれません。
ドバイ移住のためのビザ取得条件
ドバイへの移住を実現するためには、適合した居住ビザを取得する必要があります。ここでは、ドバイ移住で代表的なビザの種類とその条件について解説します。
- 不動産ビザ
- ゴールデンビザ
- 法人設立ビザ
- リタイアメントビザ
- リモートワークビザ
不動産ビザ
不動産ビザは、ドバイで一定額以上の不動産の購入で取得できる居住ビザです。このビザは2年間有効で、資産運用の一環として不動産に投資したい人や、自宅を購入して安定した生活基盤を築きたい人に適しています。
取得条件の一つは、75万AED(約3,000万円)以上の不動産を購入することです。不動産は購入者自身が保有します。不動産ビザを取得するとドバイに3年間滞在でき、更新も可能なので長期滞在できます。
ゴールデンビザ
ゴールデンビザは、ドバイで長期的に居住を希望する投資家や専門職向けに発行される特別なビザです。最大の特徴は、10年間という長い有効期間であり、ビザ更新の手間を大幅に軽減できる点にあります。
取得条件としては、200万AED(約8,000万円)以上の不動産購入が求められます。また、投資分野や科学、技術、医療分野などで優れた実績を持つ専門家も対象となる場合があります。医師、エンジニア、研究者、クリエイティブな分野で活躍する人々がこのビザを申請できます。
ゴールデンビザの保有者は、ドバイでの長期滞在だけでなく、家族を伴う移住も可能です。家族(配偶者や子ども)は保有者に付随する形で同様の居住権を得られるため、家族全体で安定した生活を送ることができます。
法人設立ビザ
法人設立ビザは、ドバイで法人を設立することで取得できるビザです。このビザは3年間有効で、ドバイを拠点にビジネスを展開したい起業家やフリーランサーに人気があります。
法人設立のプロセスは、フリーゾーンと呼ばれる特別経済区域を利用することで、比較的スムーズに進められます。フリーゾーンで法人を設立すると、外資100%保有の権利といった優遇措置が受けられます。
法人設立ビザは、フリーランスの仕事を公式に登録する方法としても利用されます。3年間の有効期間後は更新手続きが必要ですが、ビジネスが継続している限り更新は比較的容易です。
リタイアメントビザ
リタイアメントビザは、ドバイでリタイア後の生活を送りたい外国人向けに提供されるビザです。このビザは5年間有効で、一定の条件を満たすことで取得できます。
取得条件には、年齢要件(55歳以上)と資産要件が含まれます。具体的には、月額2万AED(約80万円)以上の安定した収入を証明するか、100万AED(約4,000万円)の預金、または200万AED(約8,000万円)の不動産保有が必要です。
リタイアメントビザを取得すると、ドバイでの居住権を得られるだけでなく、家族をともなうことも可能です。リタイア後の生活を楽しむためのインフラも整備されており、高品質な医療サービスや多国籍な文化環境での快適な生活が期待できます。
リモートワークビザ
リモートワークビザは、リモートワークを行う人々に向けた新しいビザ制度で、1年間有効です。このビザは、リモートで働くことができるオンライン事業者やフリーランサーに最適な選択肢となるでしょう。
取得には、月額5,000米ドル(約70万円)以上の収入証明や、リモートワークを行うための雇用契約の提出が必要です。ドバイの生活を維持できる十分な財政基盤があることを示す書類も求められます。
リモートワークビザの最大の魅力は、グローバルなビジネス環境を持つドバイを拠点にできる点です。このビザは、パンデミック以降のリモートワーク普及に伴い、非常に注目を集めています。
ドバイへの移住手順
ドバイへの移住手順にはいくつかのステップがあり、それぞれを丁寧に進めることが成功の鍵です。ここでは、各ステップについて解説します。
- 居住ビザを選ぶ
- 入国する
- 健康保険に加入する
- 居住ビザを取得する
- 家を借りるか購入する
1.居住ビザを選ぶ
ドバイ移住の第一歩は、自分に適合する居住ビザを選ぶことです。ビザにはさまざまな種類があり、目的やライフスタイルに合わせて選択する必要があります。
例として、起業を目指す場合は法人設立ビザ、資産運用を考えている場合は不動産ビザ、リタイア後の生活を送る場合はリタイアメントビザなどがあります。
2.入国する
ビザ申請が承認されると、いよいよドバイに入国します。ドバイ入国時には、空港での入国審査やパスポート管理などの基本手続きが必要です。入国審査では、ビザに関連する書類や旅券を提示し、正式な滞在許可を得ます。
3.健康保険に加入する
ドバイでは、法律によりすべての居住者に健康保険への加入が義務付けられています。これは、移住後の生活を安定させるために欠かせないステップです。
移住者は、自分に適した保険プランを選び、迅速に加入手続きを行う必要があります。保険プランは、利用可能な医療施設や治療内容の範囲によって異なります。
たとえば、高額医療をカバーするプレミアムプランや、基本的な医療サービスを受けられる低コストプランなどがあります。移住者は、ライフスタイルや予算に合ったプランを選びましょう。
4.居住ビザを取得する
入国後は、ビザの最終手続きを完了させる必要があります。ここでは、指紋採取や健康診断といった追加のプロセスが含まれることが一般的です。手続きが完了すると、正式な居住ビザが発行され、合法的にドバイに住む権利を得られます。
5.家を借りるか購入する
居住ビザの取得が完了したら、次に必要なのは住居を確保することです。住居を選ぶ際は、自分や家族のライフスタイル、予算、希望するエリアを考慮する必要があります。ドバイには、高級住宅街から手頃な価格帯のエリアまで、多種多様な選択肢があります。
住居探しの際には、交通の利便性や周辺の生活環境(学校、病院、スーパーの有無など)を考慮することがポイントです。
ドバイ移住がおすすめの人
ドバイ移住は、多くのメリットがある一方で、すべての人に適しているわけではありません。その魅力を最大限に活かせるのは、特定の目的やライフスタイルを持つ人々です。
- タックスヘイブンのメリットを享受したい人
- インターネットビジネスなどの法人設立を検討している経営者
- すでに資産があり世界中を旅行したい人
- 仮想通貨の投資家
- Web3.0関連のビジネスをしている人
タックスヘイブンのメリットを享受したい人
ドバイ最大の特徴の一つは、所得税やキャピタルゲイン税がゼロであることです。この税制優遇は、高所得者や高額納税者にとって非常に大きな魅力となります。
税負担が重い日本では、年収の高い人は所得の半分以上を税金で取られることもありますが、ドバイ移住を実現すれば税負担を大幅に軽減できます。
ただし、節税効果を得るためには、日本での「非居住者」ステータスを取得する必要があります。日本国内での税負担を回避できる一方、現地での経済活動を基盤とした新生活が始まります。ドバイの税制メリットを活用したい高額納税者や投資家にとって、移住は大きなチャンスです。
インターネットビジネスなどの法人設立を検討している経営者
ドバイは起業家やビジネスオーナーにとって、魅力的な環境を提供しています。特にオンラインビジネスやインターネットを活用したビジネスを展開する人々にとって、ドバイのフリーゾーンは大きなメリットがあります。フリーゾーンでは100%外資保有が認められており、煩雑な規制が少ないため、事業をスムーズに展開できます。
ドバイは中東市場への玄関口としての役割も果たしており、新興市場に参入するためのプラットフォームとして理想的です。国際的なビジネスネットワークを活用し、ドバイを拠点にして事業を拡大したい経営者にとって、この環境は大きなアドバンテージとなるでしょう。
すでに資産があり世界中を旅行したい人
リタイア後の生活や資産運用を目的とした移住を考える人にとって、ドバイは理想的な拠点です。ドバイの地理的特性から、ヨーロッパ、アジア、アフリカといった地域へのアクセスが良好で、自由な旅行を楽しめます。
短時間のフライトで3大大陸の国々を訪問できるため、海外旅行を好む人にとってドバイは最善の拠点です。すでに十分な資産を持ち、ビジネスではなくライフスタイルを重視した移住を考える人には、ドバイ移住が最適な選択肢となります。
仮想通貨の投資家
仮想通貨取引を行う人々にとって、ドバイの税制環境は魅力的です。多くの国では仮想通貨の取引に課税がされますが、ドバイでは個人のキャピタルゲイン税が免除されているため、仮想通貨取引の利益を全額享受できます。
ドバイ政府は仮想通貨やブロックチェーン技術に対して積極的な姿勢を示しており、関連ビジネスを支援するエコシステムが形成されています。ドバイでの仮想通貨取引やプロジェクト開発において、規制の少ない自由な環境が提供されています。
Web3.0関連のビジネスをしている人
ドバイは、Web3.0やブロックチェーン技術に関連するビジネスを行う人々にとって、有利な環境を提供しています。多くの国では規制が厳しく、イノベーションが進みにくい側面がありますが、ドバイでは逆にこれらの新しい技術を積極的に推進しています。
ドバイ国際金融センター(DIFC)やその他のフリーゾーンでは、Web3.0関連のプロジェクトをサポートするためのインフラや支援制度が充実しています。政府主導のイノベーション戦略により、仮想通貨やブロックチェーン、NFT(非代替性トークン)に関連するスタートアップが次々に誕生しています。
Web3.0ビジネスを行う企業や個人にとって、ドバイは単なる移住先にとどまらず、グローバルな市場での成長を支える重要な拠点となります。
まとめ
ドバイ移住はすべての人に適しているわけではありませんが、特定の目的やニーズを持つ人々にとっては理想的な選択肢となり得ます。節税を最大限に活用したい人、新たな市場でビジネスを展開したい起業家、リタイア後の自由なライフスタイルを追求する人、そして最先端の技術分野で活躍する人々にとって、ドバイは計り知れない可能性を提供する移住先となるでしょう。