ドバイは「税金がない国」として広く知られています。その税制の特殊性が、世界中の富裕層や企業を引き寄せ、さらなるドバイの経済発展を実現させています。
今回は、ドバイの税制について所得税にフォーカスして解説し、節税メリット、日本との税制の関係、移住時の注意点について詳しく紹介します。
※この記事では、1ディルハム=40円でレート換算しています。
ドバイには所得税がない
世界中から注目されているドバイですが、その最大の理由は所得税がない点です。
ドバイはタックスヘイブン
ドバイは世界中の富裕層や企業にとって、理想的な拠点とされています。その最大の理由は、所得税がないからです。多くの国で一般的に課される所得税やキャピタルゲイン税、住民税などが存在しないため、ドバイは「タックスヘイブン」として広く認識されています。
ドバイの税制は非常にシンプルで、日本にあるような税務手続きの煩雑さもありません。この利便性が、特にビジネスを展開する企業にとって大きな魅力となっています。
経済的な安定性や法制度の整備、インフラの充実も相まって、ドバイはグローバルなビジネス拠点として選択されているのです。
ドバイに所得税がない理由
ドバイが所得税を課していない背景には、政府の経済政策があります。過去には隣接するアブダビ首長国の石油収入に依存していたドバイですが、近年では観光業、貿易業、金融業などへの経済多角化を推進し、これが税収に代わる大きな財源となっています。観光業だけでも、ドバイは年間数千万人の訪問者を迎え、その収益が国家財政を支える柱の一つとなっています。
所得税を課さないことで、世界中の富裕層や優秀な人材を惹きつけ、ドバイの経済活性化につながっています。このように、所得税の免除は単なる税制の一環ではなく、経済成長を支える重要な政策になっているのです。
キャピタルゲイン税(譲渡所得税)もない
ドバイの税制のもう一つの特徴は、インカムへの課税だけでなく、キャピタルゲインへの課税がないことです。不動産や株式などの資産売却による利益に対して税金が課されないため、投資家にとって非常に有利な環境が整っています。
たとえば、ドバイで購入した不動産を高額で売却しても、その利益に課税されません。そのため、ドバイでは不動産への投資が盛んであり、世界中の投資家がドバイの不動産に注目しています。
住民税もない
多くの国で地方自治体が住民サービスのために住民税が徴収されますが、ドバイではそのような税金は存在しません。住民税という概念がないのです。住民税がないことで、給与の手取り額が高くなり、結果として生活費を抑制できます。
ドバイの生活コストは一見高額に思えますが、税制の恩恵を考慮すると、他国と比較しても実質的な負担は軽減されるといえるでしょう。この点も、ドバイが移住先として人気を集める理由の一つです。
ドバイにおける所得税以外の税金
ドバイには所得税がありませんが、財源を確保するために課される税金や手数料があります。ここでは、それらの税金・手数料について解説します。
- 法人税
- 固定資産税
- 消費税
- 相続税・贈与税
法人税
2023年の税制改正によって、ドバイでも9%の法人税が課されるようになりました。ただし、法人税が適用されるのは、年間課税所得が375,000ディルハム(約1,500万円)を超える企業に限定されています。
さらに、ドバイには「フリーゾーン」と呼ばれる経済特区が存在し、これらの地域に設立された企業は一定の要件を満たせば法人税が免除されます。このような優遇措置により、ドバイは引き続き企業にとって魅力的なビジネス拠点であり続けています。
固定資産税
ドバイでは、直接的な固定資産税は存在しません。固定資産税とは、土地や住宅、工場、飛行機、車両などの固定資産に課税される税金です。代表的な固定資産は不動産です。
日本をはじめ、アメリカ、カナダ、フランス、イギリス、ドイツなど主要国には固定資産税がありますが、ドバイにはありません。この点も不動産を購入する際に非常に有利です。
ただし、不動産を購入する際に、購入価格の約4%に相当する登録料が課されるため、注意してください。
消費税
ドバイでは、日本の消費税に相当する付加価値税(VAT)が2018年に導入されました。付加価値税は税率が5%と低く設定されています。また、生活必需品や医療品の多くが免税対象であるため、日常生活への負担は最小限に抑えられています。
一方で、ドバイでは特定の商品に対して物品税が課されます。タバコ、電子タバコ機器、エネルギードリンクには100%、炭酸飲料には50%の税率が適用されています。これらの課税は、健康への配慮と嗜好品消費の抑制を目的としています。
相続税・贈与税
ドバイには、相続税や贈与税が存在しません。日本では6億円を超える資産(法定相続分に応ずる取得金額)を保有していると55%の相続税が課税されるため、資産家や富裕層にとっては理想郷のようです。ドバイに移住すると、大規模な資産承継を円滑にできるようになります。
ただし、日本の相続税・贈与税を回避するには、被相続人や相続人がともに海外で10年以上生活する必要があるなど、厳しい条件を満たす必要があります。資産承継を理由としてドバイ移住を考えている人は、税務当局に「租税回避行為」と見られないように専門家のアドバイスのもとに行うようにしてください。
ドバイの財源対策
ドバイには諸外国には存在する税金がない一方で、政府はさまざまな方法で財源を確保しています。ここでは、ドバイが採用している主要な財源確保の手段について解説します。
- 関税
- 飲食・宿泊などサービスへの手数料
- その他のサービス手数料
関税
関税は、ドバイ政府の財政を支える重要な収入源です。ドバイは「自由貿易港」として知られる一方で、特定の商品には関税を課すことで収益を得ています。
一般商品への関税
多くの一般商品には5%の関税が適用されています。この関税率は世界的に見ても低めに設定されており、自由貿易を阻害するものではありません。また、食品や医療品といった必需品は免税対象となっており、住民や旅行者の生活コストを抑える配慮がなされています。
嗜好品や贅沢品への高関税
嗜好品や贅沢品には高い関税が課されています。たとえば、タバコやアルコール飲料、自動車(特に高級車)などが対象です。これらの商品に対する消費を抑制しつつ、財源の一部を確保しています。
地理的優位性を活かした関税収入
ドバイは中東地域の貿易ハブとして機能しており、輸入品の周辺国への再輸出も多くあります。この再輸出時には追加の関税が課されないため、輸出入を効率的に行うための拠点として多くの企業に利用されています。その結果、関税収入が安定的に確保されています。
飲食・宿泊などサービスへの手数料
ドバイでは、観光業や不動産市場を通じて多額の収入を得る仕組みが構築されています。特にホテルやレストラン、賃貸経営に関連するサービスには手数料が課されており、これが事実上の間接税として機能しています。
宿泊施設の手数料
ドバイを訪れる観光客が支払う宿泊料金には、10~15%の手数料が上乗せされています。この手数料は政府の収入として直接的に反映されるだけでなく、観光業界全体の発展にも活用されています。
たとえば、この収益は次のような分野に投資されています。
- 新しい観光施設の開発
- 国際イベントの開催支援
- 公共交通機関の整備
飲食店のサービス料
ドバイの飲食店では、利用料金に5~10%のサービス料が追加されるのが一般的です。この料金は一部が政府に納められる仕組みになっており、飲食業界全体の収益性向上にも寄与しています。
アパートメント賃貸経営
不動産賃貸業もドバイの主要な収入源の一つです。賃料収入の約5%が政府に納付される手数料として設定されています。ドバイの不動産市場は高額な賃料で知られており、これにより大きな収益が見込まれます。
その他のサービス手数料
ドバイ政府は、公共サービスや許認可手続きに対する手数料を課すことで、さらに多様な収入源を確保しています。
交通・インフラ関連手数料
ドバイでは道路使用料(Salik)や公共交通機関の利用料金が、財源の一部として活用されています。Salikは主要な道路に設置されたゲートを通過する際に課される料金で、交通渋滞の緩和と財政収入の確保を目的としています。
行政手続きに関する手数料
居住ビザの発行や更新、企業設立の登録料など、さまざまな行政サービスにも手数料が課されています。これらの手数料は、外国人居住者や企業がドバイで活動を行う際に避けられないコストとなっており、安定した収入源を提供しています。
観光業とイベント収益の活用
観光業はドバイの経済において極めて重要な位置を占めています。観光施設の入場料や国際イベントの開催による収益も、ドバイ政府の財源を支える大きな柱となっています。
ドバイで節税メリットを受ける際に注意すべきポイント
ドバイの税制は所得税やキャピタルゲイン税、住民税が免除されるなど、世界的に見ても非常に魅力的です。しかし、日本の税制や制度を無視すると、思わぬトラブルや不利益を招く可能性があります。最後に、ドバイ移住や投資を通じて節税を検討する際に注意すべきポイントについて解説します。
- 日本の「非居住者」とならなければならない
- 出国時に「出国税」がかかる
- 専門家の助言を受ける
日本の「非居住者」とならなければならない
日本の税制では、非居住者と認定されることで日本での課税を回避することが可能です。しかし、非居住者として認定されるには、いくつかの厳格な条件を満たす必要があります。
非居住者として認定されない場合、日本国内での所得税や住民税の負担が継続します。これにより、期待していた節税効果が得られない可能性があります。
183日ルールの遵守
日本国外で183日以上滞在することが非居住者認定の基本条件です。この期間は、1月1日から12月31日までのカレンダーイヤーを基準に計算されるため、移住のタイミングが重要です。たとえば、年度途中で出国した場合、出国した年に非居住者と認定されない可能性があります。
生活の拠点を海外に移す
滞在日数だけでなく、生活の実態も重視されます。具体的には、ドバイでの住居の有無、日本での家族の居住状況、銀行口座や公共料金の支払い拠点が考慮されます。
証明書類の準備
非居住者認定のためには、滞在国での居住証明書や滞在日数を証明する書類を用意する必要があります。ドバイでは、居住ビザを取得し、住民としての登録を行うことで証明書を発行してもらうことが可能です。
出国時に「出国税」がかかる
日本の「国外転出時課税制度」により、一定の資産を持つ人は出国時に含み益に対して課税される可能性があります。この制度は、高額資産を持つ個人の海外移住による課税逃れを防ぐために導入されたものです。
対象となる資産は、1億円以上の有価証券(株式、債券、投資信託など)、未上場株式や特定の信託受益権があります。出国税の支払いが完了していない場合、納税未了の状態として日本国内での法的リスクが生じる可能性があります。
課税対象の計算方法
対象資産の含み益(売却時に得られるであろう利益)に対して所得税が課されます。これにより、実際に売却していない資産にも税負担が発生するため、計画的な資産管理が求められます。
回避策と準備
出国税を回避するためには、事前に専門家のアドバイスを受けることが重要です。具体的には、資産の分散化や再編、資産管理会社の設立などがあります。
専門家の助言を受ける
ドバイの税制を最大限に活用するには、専門家の助言が欠かせません。国際税務に詳しい税理士や会計士、ファイナンシャルプランナーなどのプロフェッショナルと連携することで、以下のようなメリットが得られます。
税制の最新情報の把握
日本では、ほぼ毎年税制が改正されます。ドバイも大幅な税制改正があるため、最新情報の把握は必須です。事前に計画を立て、不測のリスクを回避します。
適切な手続きの実施
居住地変更の手続きや非居住者認定のための書類準備など、煩雑な手続きをスムーズに進められます。
個別の事情に応じたアドバイス
個々の資産状況や移住計画に応じたカスタマイズされたアドバイスによって、より効果的な節税が可能になります。
まとめ
ドバイの税制は非常に魅力的です。節税を第一の優先事項とするならば、ドバイへの移住は最適解といえるかもしれません。
ドバイの節税メリットを享受するためには、日本の税金に関する知識をしっかり身につける必要があります。非居住者認定の条件や出国税に関する知識は不可欠です。
日本の税金から離れるための手続きや、注意すべき点などを専門家にご相談しながら、計画的に準備を進めることで、ドバイでの新しい生活をスムーズにスタートできます。