ドバイは中東の金融ハブとして発展を続けており、世界中の企業や投資家が注目しています。ビジネス環境の整備が進み、税制の優遇措置もあるため、多くの個人・法人がドバイの銀行口座を開設しています。
今回は、ドバイで銀行口座を開設するメリットや手続き、必要書類、手数料について詳しく解説します。
ドバイで銀行口座を開設するメリット
銀行口座を開設することで、さまざまなメリットを享受できます。ドバイの金融機関は安定しており、国際取引の利便性も高いため、海外進出を考えている法人だけでなく、投資家や個人にも多くの利点があります。
- ビジネス環境の魅力にあふれている
- タックスメリットがある
- 国際送金がしやすい
- 投資機会が得られる
- ドバイの銀行は倒産リスクが低い
ビジネス環境の魅力にあふれている
ドバイは、金融・貿易・不動産・観光・ITなど多様な業界が成長しており、世界的な企業が集まる国際都市です。銀行も法人向けのサービスが充実しており、海外展開を検討する企業にとって有利な環境が整っています。
ドバイ国際金融センター（DIFC）などの特別経済区では、企業がスムーズに金融取引を行えるよう支援が充実しています。
タックスメリットがある
ドバイはタックスヘイブン施策を採用しており、多くの個人・法人にとって大きな魅力となっています。個人の所得税はゼロであり、住民税や固定資産税、キャピタルゲイン税（譲渡所得税）、自動車税などもかかりません。
法人税も9％と低税率に設定されています。また、年間の法人所得が37万5,000ディルハム（約1,500万円）以下であれば、非課税となる優遇策もあります。節税対策を検討している個人や企業にとって、ドバイの銀行口座は有効な選択肢となります。
国際送金がしやすい
ドバイの銀行は、世界中の金融機関と広範なネットワークを持っており、国際送金がスムーズに行えます。多くの銀行がSWIFTシステムを採用しており、主要通貨での送金が可能です。
アラブ首長国連邦（UAE）の通貨・ディルハムは、アメリカ・ドルと連動するドルペッグ制を採用しており、為替レートも比較的安定しているため、頻繁に海外送金を行う企業や投資家にとって有利な環境となっています。
投資機会が得られる
ドバイでの投資をスムーズに進めるためには、現地の銀行口座の開設が不可欠です。
ドバイは、中東地域の経済的中心地として発展を遂げており、投資環境も非常に魅力的です。ドバイの急激な経済成長に伴って不動産市場が急成長しており、世界中の投資家から注目されています。金融市場も盛況で、日本では運用できない株式や投資信託、債券へも投資が可能です。
また、近年では、ドバイは暗号資産（仮想通貨）の取引や関連事業のハブとしての地位を確立しつつあります。投資家は規制の整った環境で暗号資産取引を行うことができます。
ドバイの銀行は倒産リスクが低い
ドバイの大手銀行は政府の支援を受けており、財務基盤が非常に安定しています。国際的な金融規制にも準拠しているため、資産を安心して預けることができます。政府の監督が強く、銀行の信用リスクも低いため、大口の預金や資産運用を行う際にも安心感があります。
ドバイ居住者・非居住者の口座開設の違い
ドバイの銀行口座は、居住者（UAEの滞在ビザを持つ人）と非居住者（海外在住者）で開設条件が異なります。
日本在住者でもドバイの銀行口座を開設できる
日本に住みながらドバイの銀行口座を開設すること自体は可能です。UAE最大の銀行であるエミレーツNBDでは、非居住者向けの口座開設サービスを提供しており、一定の条件を満たせば口座を開設できます。
ただし、最低預金額の要件や手続きの厳格化が進んでいるため、事前に詳細を確認しておくことが重要です。
非居住者が開設できる銀行は限られる
非居住者向けの銀行口座を提供している銀行は限られており、多くの銀行は居住者向けのサービスに特化しています。大半の銀行では口座開設時にエミレーツID（UAEのマイナンバーカードに相当する身分証明書）の提示が求められるため、非居住者が利用できる銀行の選択肢は限られます。
近年はマネーロンダリング対策の強化に伴い、非居住者の口座開設に対する審査が厳しくなっています。開設の手続きでは、必要書類の準備や銀行の要件を事前に確認し、スムーズに手続きを進められるよう対策を講じるようにします。
ドバイの銀行の種類と特徴
ドバイには国内外の銀行が数多く存在しており、個人口座・法人向け口座の両方に対応する金融機関が豊富に揃っています。各銀行はそれぞれ異なるサービスや特徴を持っており、銀行選びは目的やニーズに応じて慎重に行う必要があります。
給与振込用の口座を開設したいのか、法人向けの取引口座を必要としているのか、あるいは投資や資産運用を目的としているのかによって、選択すべき銀行は異なります。ここでは、ドバイで代表的な銀行を紹介します。
Emirates NBD（エミレーツNBD銀行）
エミレーツNBD銀行はUAE最大手の銀行であり、国内外に広がる強固なネットワークを有しています。ドバイをはじめとするUAE全土に多くの支店とATMを展開しており、個人・法人問わず、多くの顧客に利用されています。給与振込用の銀行口座としての利便性が高く、多くの企業が従業員向けの給与口座として推奨しています。
エミレーツNBD銀行の大きな特徴の一つが、オンラインバンキングの利便性の高さです。スマートフォンアプリやウェブサイトを通じたオンラインバンキングサービスが充実しており、国内外への送金、請求書の支払い、投資商品の購入などが簡単に行えます。デビットカードやクレジットカードの発行にも対応しており、UAE国内だけでなく、国際的な利用にも適しています。
法人口座の開設にも対応しており、国内企業だけでなく、外国企業向けの法人サービスも充実しています。国際取引が多い企業にとっては、外貨建ての取引口座を開設できる点が大きな魅力です。
Mashreq Bank（マシュレク銀行）
マシュレク銀行は、UAEでもっとも歴史のある民間銀行の一つであり、特にビジネス口座に強みを持つ銀行として知られています。法人向けの銀行サービスが充実しており、新規ビジネスオーナーやスタートアップ企業にとって、魅力的な選択肢となっています。
マシュレク銀行の特徴として、最低預金額の要件が比較的低めであることが挙げられます。新規事業を立ち上げたばかりの企業にとっては、資金負担を抑えながら口座を開設できる点がメリットとなります。
ドバイのフリーゾーン（経済特区）に登録された企業向けのサービスも充実しており、フリーゾーン内でビジネスを展開する企業にとって利便性の高い銀行といえます。
Dubai Islamic Bank（ドバイ・イスラム銀行）
ドバイ・イスラム銀行は、UAE最大のイスラム金融機関の一つであり、イスラム法（シャリア）にもとづいた金融サービスを提供しています。イスラム金融とは、利子（リバ）を禁止し、資産を実物経済と結びつける仕組みを持つ金融システムのことを指します。そのため、伝統的な銀行とは異なり、利益を共有するパートナーシップ型の融資や、特定の投資契約をベースとした金融商品が提供されています。
ドバイ・イスラム銀行の特徴は、イスラム金融商品を活用した資産運用が可能であることです。ムラバハ（売買契約型の投資）やムダーラバ（利益分配型の投資）などのシャリア適合型金融商品を提供しており、イスラム金融を利用した投資を検討している人に適した銀行といえます。
また、非居住者でも口座開設のチャンスがある点も魅力の一つです。一般的に、UAEの銀行では居住者でなければ口座開設が難しいケースが多いですが、ドバイ・イスラム銀行では、一定の条件を満たせば非居住者でも口座を開設できる場合があります。
その他の銀行（ADCB、RAKBANKなど）
エミレーツNBD銀行やマシュレク銀行、ドバイ・イスラム銀行以外にも、ドバイにはさまざまな銀行があり、それぞれ異なる強みを持っています。
ADCB（アブダビ・コマーシャル・バンク）は、中小企業向けのサービスが充実しており、特に新興企業やスタートアップ向けの法人サービスに強みを持っています。フリーゾーン企業のためのビジネス口座の開設や、中小企業向けの融資プログラムが充実しており、ドバイでビジネスをスタートする法人にとって利便性の高い銀行といえます。個人向けの金融サービスも充実しており、給与口座や住宅ローン、投資商品など幅広い金融商品を提供しています。
RAKBANK（ラス・アル・ハイマ国立銀行）は、手数料が比較的安く、個人向けの銀行サービスが充実している点が特徴です。外国人居住者向けの銀行口座の開設がスムーズに行えるため、ドバイに新しく移住した人々にとって利用しやすい銀行といえます。オンラインバンキングやモバイルアプリの利便性も高く、日常の銀行取引を簡単に管理できる点も魅力です。
銀行口座開設の手続きと必要書類
ドバイで銀行口座を開設するには、個人と法人でそれぞれ手続きが異なります。個人口座は比較的簡単に開設できますが、法人向け口座はより厳格な審査が行われるため、事前の準備が重要です。非居住者の場合は開設可能な銀行が限られているため、対応可能な銀行を選ぶ必要があります。
個人口座を開設する手順
ドバイの個人口座は、居住者であれば比較的スムーズに開設できます。しかし、非居住者の場合、特定の銀行でしか開設できず、最低預金額の条件も厳しくなることが一般的です。開設を希望する銀行の条件を事前に確認し、必要書類をそろえて手続きを進めるようにしましょう。
- 銀行を選択する
- 必要書類を準備する
- 銀行窓口またはオンラインで申し込む
- 書類審査と承認を待つ
- 口座開設が完了する
銀行を選択する
ドバイには複数の銀行がありますが、それぞれ提供するサービスや口座の種類が異なります。自分の目的に合った銀行を選ぶようにします。
給与受取のための口座であればエミレーツNBD銀行、投資目的ならドバイ・イスラム銀行などが選択肢となります。非居住者向けの口座を提供する銀行は限られているため、事前に条件を確認しておくことが必要です。
必要書類を準備する
個人口座を開設する際には、以下の書類が必要となります。
- 有効なパスポート
- UAEの居住ビザ（居住者の場合）
- エミレーツID（居住者の場合）
- 現住所の証明（公共料金の請求書、賃貸契約書など）
- 雇用証明書または収入証明書（給与口座の場合）
銀行によっては、追加の書類を求められることがあります。非居住者の場合、収入証明や資金の出所証明などが必要になることがあるため、事前に確認しておくとスムーズに手続きを進めることができます。
銀行窓口またはオンラインで申し込む
多くの銀行では、口座開設のために直接窓口へ行く必要があります。一部の銀行ではオンライン申請が可能となっており、非居住者でも遠隔で手続きを進められる場合があります。オンラインで申請を行った場合でも、最終的な本人確認のために現地の支店へ行く必要があることが一般的です。
書類審査と承認を待つ
提出した書類は銀行によって審査され、問題がなければ口座開設が承認されます。審査には通常1週間程度かかりますが、銀行によっては2週間以上かかる場合もあります。
口座開設が完了する
口座が承認されると、デビットカードが発行され、オンラインバンキングの設定も完了します。一部の銀行では即日でデビットカードを受け取ることができますが、通常は数日後に郵送されるケースが多いです。
オンラインバンキングの利用によって、口座残高の確認や送金が簡単に行えるようになります。
法人口座を開設する手順
ドバイで法人向けの銀行口座を開設するには、企業の登録情報や事業計画の詳細を提出する必要があります。銀行によっては、法人の信用調査は厳格であるため、事前に十分な準備をします。
- 法人登記情報を準備する
- 銀行口座を申し込む
- 代表の本人確認の手続きをする
- 口座開設後、資本金を入金する
法人登記情報を準備する
法人口座を開設するためには、以下の書類が必要となります。
- 会社の登記証明書
- 法人ライセンス（商業ライセンス）
- 会社の定款（Memorandum and Articles of Association）
- 主要株主および取締役のパスポートコピー
- 事業計画書（ビジネスの目的や資金の流れを示すもの）
銀行によっては追加の書類が求められる場合があり、特に新規法人の場合は事業内容を詳細に説明する必要があります。
銀行口座を申し込む
企業の取引内容や財務状況を説明する必要があります。特に新規ビジネスの場合は、事業の見込み収益や取引先の情報を求められるでしょう。また、一部の銀行では最低預金額の基準を設けているため、それ以上の金額を入金します。
代表の本人確認の手続きをする
法人口座の開設には、代表者の本人確認が必須となります。一部の銀行では、代表者が直接支店を訪れて本人確認を行う必要がありますが、特定の銀行ではリモートでの認証が可能な場合もあります。
口座開設後、資本金を入金する
口座が承認されると、事業運営に必要な資本金を入金する必要があります。一部の銀行では、一定額の預金を維持しなければならないため、口座開設後も条件を確認するようにします。
ドバイの銀行口座の手数料
銀行口座を維持するためには、さまざまな手数料がかかります。手数料の種類と目安を把握し、コストを最小限に抑える工夫が必要です。
口座維持手数料
一般的な口座維持費は、月額25ディルハム（約1,000円）程度となっています。ただし、VIP口座や高額預金者向けの口座では、一定の預金額を維持することで口座維持費が無料になる場合もあります。
国内取引手数料（ATM・振込）
ドバイ国内のATM手数料は、同行ATMを利用する場合は24時間無料です。国内振込手数料は、インターネットバンキングやATMからの振込であれば無料ですが、窓口からの振り込みでは5ディルハム（約200円）程度の手数料がかかる場合があります。
国際送金手数料
日本とドバイの間で国際送金を行うと、手数料がかかります。銀行を利用すると高額になってしまいますので、WiseやPayoneerなどの海外送金サービスを利用すると安く送金できます。
まとめ
ドバイでの銀行口座の開設には、多くのメリットがあります。税制の優遇措置や国際的な金融ネットワークの充実、安定した経済環境など、個人・法人を問わず資産管理やビジネスの展開に最適な条件が整っています。
ただし、非居住者の場合は開設可能な銀行が限られるほか、厳格な審査が求められます。銀行ごとに必要書類や最低預金額、手数料の体系が異なるため、事前に比較検討し、自身の目的に合った銀行を選ぶようにしましょう。
