ドバイへの移住は、税制優遇や治安の良さなど魅力が多い一方で、生活環境や文化の違いなどから後悔する人がいるのも事実です。今回は、ドバイ移住のメリットと課題、そして後悔を避けるための対策を解説します。
ドバイ移住が注目される主な理由
世界中の経営者や投資家がドバイに注目するのには、明確な理由があります。ドバイは単なる観光地ではなく、国際都市としての機能を備えた新しいビジネスの拠点です。資産形成を目指す人から、グローバルに事業を展開したい人まで、幅広い層が移住先として検討しています。ここでは、ドバイ移住が注目される主な理由を解説します。
- ビジネス環境が整っているから
- 移民を歓迎する国づくりになっているから
- 魅力的な優遇税制があるから
- 犯罪が少なく治安が良いから
ビジネス環境が整っているから
ドバイは中東最大のビジネスハブとして、多国籍企業が集まる都市です。注目されるのが、外国企業に開放されている「フリーゾーン」です。
フリーゾーンでは、外国人が100％株式を保有できる仕組みが整っています。スタートアップも積極的に進出しており、国際的なビジネス交流が活発に行われています。
ドバイでは、国際展示会や商談イベントが年間を通じて多数開催されています。ドバイ世界貿易センターで毎年開催されるコンピュータ展示会の「GITEX」や、中東・北アフリカ最大の不動産展示会「Cityscape」などは、世界中のビジネスリーダーを引き寄せています。こうした場に参加することで、グローバルなネットワークを築きやすくなる点は、大きな魅力といえるでしょう。
移民を歓迎する国づくりになっているから
人口の約9割が外国人というドバイは、世界でも稀に見る移民都市です。移民が安心して生活できるよう、教育や医療のインフラは国際基準に合わせて整えられています。
インターナショナルスクールは世界各国のカリキュラムを採用しており、子どもを持つ家庭にとって安心できる環境が提供されています。ドバイではアラビア語が公用語である一方、ビジネスや日常生活では英語が広く使用されています。そのため、日本人を含む多くの外国人にとって、生活のハードルは比較的低いといえます。
移民同士が共存する社会であるため、多様性が尊重され、異文化に飛び込む不安を軽減してくれる点もメリットです。
魅力的な優遇税制があるから
ドバイの最大の魅力の一つは、税制にあります。個人の所得税がゼロであることはもちろん、譲渡所得税（キャピタルゲイン税）、固定資産税、相続税、贈与税も存在しません。これは、資産を効率的に増やしたい経営者や投資家にとって非常に大きなインセンティブです。
日本人がドバイの税制メリットを受けるためには、日本の非居住者とならなければなりません。そのためにも、ドバイ移住が必須となるのです。資産形成やビジネス拡大を狙う人にとって、ドバイは世界的に見ても有利な選択肢となっているのです。
犯罪が少なく治安が良いから
中東という地理的なイメージから治安に不安を持つ人もいますが、ドバイは世界でも有数の安全都市とされています。街中には監視カメラが整備されており、厳しい法律によって犯罪は未然に防がれています。そのため、重大犯罪の発生率は非常に低い水準に保たれています。
外国人にとって安心できるのは、日常生活の中での安全性です。夜間に女性が一人で外出しても危険を感じにくく、子どもが安心して過ごせる都市としても評価されています。
世界中の都市の治安などの生活関連情報を集めたデータウェブサイト「Numbeo」の調査によると、ドバイは2025年の「Safety Index」で世界第4位に位置しているのです。
出典：Numbeo Safety Index by City2025
ヨーロッパ・アジア・アフリカに渡航しやすいから
ドバイは地理的にヨーロッパ・アジア・アフリカをつなぐ中継地点にあり、国際空港は世界でもトップクラスの規模を誇ります。
ドバイ国際空港は、国際線の旅客数で世界一を誇る年もあり、アクセスの良さは圧倒的です。ヨーロッパ主要都市には7時間前後、アジアの多くの都市には5～7時間程度で到着可能で、出張や旅行においても利便性は抜群です。ロンドン、パリ、香港、シンガポールといった主要都市へは直行便が毎日運航しており、国際ビジネスを行う拠点として理想的な立地といえます。
地理的な優位性は、観光業や貿易業にもプラスに働いています。グローバル市場にアクセスしやすい拠点であることが、ドバイ移住を後押しする理由の一つとなっているのです。
ドバイ移住に必要なビザの種類と特徴
ドバイ移住に必要な居住ビザには複数の種類があります。ここでは、代表的なビザの種類と特徴を解説します。
- 不動産ビザ（Property Owner Visa）
- ゴールデンビザ（Golden Visa）
- それ以外のビザ
不動産ビザ（Property Owner Visa）
不動産ビザは、ドバイで一定額以上の不動産を購入した個人に発行される居住ビザです。最低投資額は75万AED（約3,000万円相当）とされ、有効期間は通常3年間です。不動産投資を通じて資産運用と移住を両立させたい人に最適であり、ドバイの住宅市場の成長とともに注目されています。
ゴールデンビザ（Golden Visa）
ゴールデンビザは、特定の基準を満たす投資家や専門家に発行される長期滞在可能なビザです。有効期間が5年または10年と長く、家族にも適用されるため、安定した生活基盤を築くことが可能です。
不動産購入の場合は、200万AED以上（約8,000万円）の投資が必要です。不動産以外でも、ドバイ国内でのビジネス投資が対象となる場合があります。
それ以外のビザ
不動産投資やビジネス投資に限らず、働き方や職業に応じて取得できるビザも整備されています。
- グリーンビザ（Green Visa）
- 就労ビザ（Employment Visa）
- リモートワークビザ（Virtual Working Visa）
グリーンビザ（Green Visa）
グリーンビザは、フリーランス、自営業者、高度な技能を持つ専門家向けの自己スポンサー型ビザです。有効期間は5年間と比較的長く、自立して働きたい人に適しています。近年、柔軟な働き方を求める人から注目されています。
就労ビザ（Employment Visa）
就労ビザは、ドバイで就職して働く際に必要なビザです。雇用主となる企業がスポンサーとなり、申請手続きを進める形になります。企業側のサポートを受けられるため、初めての移住者には安心感があります。
リモートワークビザ（Virtual Working Visa）
リモートワークビザは、国外企業に雇用されている人が、リモートワークをしながらドバイで生活できるビザです。有効期間は1年間で、オンラインを活用した働き方が一般化する中、柔軟な選択肢として広がりを見せています。
ドバイ移住で後悔する主な理由
魅力的な一方で、ドバイ移住には後悔を招く要素もあります。SNSやメディアでは「税金ゼロ」「豪華な生活」といった華やかな面が強調されがちですが、実際には生活する中で不便やストレスを感じる人も少なくありません。ここでは、多くの移住者が直面する現実的な課題を詳しく解説します。
- 砂漠気候で非常に暑いから
- 物価が高く生活費が高額になるから
- 宗教・文化の違いに戸惑いを覚えるから
- 娯楽の選択肢が限られるから
- 歴史に触れる施設が少ないから
- 日本から遠く頻繁な帰国が難しいから
砂漠気候で非常に暑いから
ドバイの気候は砂漠特有で、夏場は50度近くに達することもあります。5月から10月にかけては猛烈な暑さが続き、日中の外出はほぼ不可能になります。そのため、移動のほとんどが車やタクシーに依存する生活となり、徒歩での移動はできません。
冷房の効いた室内は快適ですが、その分電気代はかさみます。また、外の暑さと屋内の冷房の温度差が体調不良の原因になることもあります。日本のように四季を楽しむ文化に慣れている人にとっては、季節感がないことが大きなストレスになりやすいでしょう。
物価が高く生活費が高額になるから
ドバイの生活費は一般的に高く、東京以上です。日常的に利用する食品や生活用品の多くは輸入品であり、物価は日本よりも割高です。外食費は高水準で、カジュアルなランチでも日本の倍近い価格になることがあります。
大きな負担となるのが教育費と医療費です。子どもをインターナショナルスクールに通わせる場合、年間数百万円単位の学費が必要です。学校によっては一人当たり年間300～500万円に及ぶこともあり、家計に大きなインパクトを与えます。
医療についても、ドバイの病院は設備が整っている反面、診察や治療費は高額です。保険に加入していたとしても日本より医療費は高くなりがちなため、生活費全体を見積もる際には、日用品や家賃だけでなく教育費や医療費も含めて計算するようにします。
宗教・文化の違いに戸惑いを覚えるから
ドバイは多文化都市である一方、イスラム教にもとづいたルールや習慣が日常に根付いています。ラマダン（断食）期間中は公共の場での飲食が禁止され、慣れていない人にとっては大きな制約と感じられるでしょう。
服装や振る舞いに関しても注意が必要です。女性は露出度の高い服装を避ける必要があり、公共の場でのスキンシップも控えるのが一般的です。飲酒に関しては免許制であり、許可された場所でしかお酒は飲めません。
こうした文化的な違いは、日常の些細な場面でも影響します。日本では当たり前の行動がドバイでは禁止されている場合があるため、慣れるまではつねに意識を向ける必要があります。これが精神的な負担となり、ストレスを感じる移住者も多いのです。
娯楽の選択肢が限られるから
ドバイは豪華なショッピングモールや人工島など、観光施設が豊富に見える一方で、移住して長期的に生活する人にとっては娯楽の選択肢が限られています。アルコールの規制があるため、ナイトライフを楽しむ文化は制限されています。
ショッピングや高級レストランでの食事は魅力的ですが、毎日の生活においては単調さを感じる人も少なくありません。自然を楽しむという点でも、砂漠気候のため公園や自然散策の機会は限られています。
結果として、「観光として訪れるには楽しいが、住むとなると物足りない」と感じる移住者が出てしまうのです。
歴史に触れる施設が少ないから
ドバイは急速に発展した都市であり、伝統的な歴史的建造物や文化的施設は限られています。近代的な高層ビル群や人工的に作られた街並みは圧巻ですが、歴史や文化を重視する人にとっては深みのある体験が得にくいかもしれません。
ドバイ博物館やアルファヒディ歴史地区など、過去のアラビア文化を学べる場所もありますが、その数は決して多くありません。日本の京都やヨーロッパの伝統都市のように街全体が歴史的遺産であるわけではなく、文化的な豊かさを求める人には物足りなさを感じるでしょう。
日本から遠く頻繁な帰国が難しいから
ドバイは日本から直行便で約10時間の距離にあります。観光で訪れるなら便利なアクセスですが、生活するとなると「遠い」という現実がのしかかります。
頻繁に日本に帰国することは現実的ではなく、年に1〜2回程度に限られる人が多いのが実情です。家族や友人と距離があることは心理的な負担となるかもしれません。
ドバイ移住で後悔しないための対策
後悔を避けるには、移住前の準備と生活の工夫が欠かせません。現実的な課題に対して、前もって対応策を考えることが重要です。最後に、ドバイ移住で後悔しないための対策について解説します。
- 暑さに適応する生活スタイル
- 生活費を節約する工夫
- 娯楽を楽しむよりビジネス・勉学に集中する
暑さに適応する生活スタイル
夏場は外出を控え、冷房設備の整った生活環境を整えます。活動は早朝や夜に集中させるなど、生活リズムを最適化すると快適に過ごせます。また、屋内で楽しめる趣味を持つことも、暑さを乗り越える工夫となります。
服装や水分補給にも注意が必要です。通気性の良い衣服や日焼け対策を徹底すると体への負担を減らせます。子どもや高齢者がいる家庭では、体調管理を最優先にし、熱中症対策を日常のルーティンに組み込みます。
生活費を節約する工夫
生活費を抑えるには、外食をなるべく控えて、ローカルスーパーや市場を利用して自炊することが効果的です。学費や医療費については事前のリサーチと保険加入が欠かせず、長期的な生活設計が必要になります。
娯楽を楽しむよりビジネス・勉学に集中する
娯楽の選択肢が少ない分、ビジネスや自己研鑽に時間を割くことができます。専門分野のスキルアップや国際的な人脈作りに注力すれば、ドバイ生活をより有意義にできます。
これらの制約を逆手に取り、自己成長の機会として活かすことで後悔は減らせます。現地で開催される国際展示会やセミナーに積極的に参加すれば、ビジネスの拡大に直結します。また、語学力や交渉力の向上に努めることで、より幅広い人脈を築けます。
娯楽の少なさを「自己成長に集中できる環境」と捉えれば、むしろ移住を成功へと導く大きな要因となります。
まとめ
ドバイ移住は大きな可能性と同時に、現実的な課題も抱えています。事前準備と心構え次第で後悔を防ぎ、成功へとつなげることは十分可能です。夢として憧れるだけではなく、現実的な選択肢の判断が、移住成功への第一歩となるでしょう。
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