ドバイは、観光やビジネスの中心地として世界中から注目を集める都市です。特に、不動産市場はその安定性と成長性から、多くの投資家にとって魅力的な選択肢となっています。
不動産ビザやゴールデンビザは、こうした投資家に向けた制度であり、ドバイでの長期滞在や移住を可能にするものです。
今回は、不動産ビザの特徴や取得要件、手続きの流れ、さらには投資のメリットやリスクについて詳しく解説します。ドバイでの投資を検討する上で、役立つ情報をお伝えします。
ドバイのビザの種類
ドバイではさまざまな目的に応じたビザが発行されており、観光、就労、投資など用途に応じて選択可能です。ここでは、代表的なビザの概要について解説します。
- 観光ビザ(Tourist Visa/On-arrival Visa)
- 就労ビザ(Working Visa)
- リモートワークビザ(Virtual Working Visa)
- フリーランスビザ(Freelance Visa)
- 不動産ビザ(Property Owner Visa)
- 家族ビザ(Family Visa)
- ゴールデンビザ(Golden Visa)
観光ビザ(Tourist Visa/On-arrival Visa)
観光ビザは、ドバイへの短期旅行や観光のために発行されるビザです。観光ビザにはツーリストビザ(Tourist Visa)と到着時ビザ(On-arrival Visa)の2種類があります。
ツーリストビザは、ドバイ到着前に事前申請が必要です。旅行代理店や航空会社を通じて取得します。滞在可能期間は30日または90日です。
到着時ビザは、事前申請の必要がありません。日本を含む一部の国のパスポート保持者は、到着時に自動的に30日間の滞在が許可されます。
就労ビザ(Working Visa)
就労ビザは、ドバイで就職して働く際に必要なビザです。雇用主となる企業がスポンサーとなり、手続きを進めます。
有効期間は通常2年で、雇用契約の更新に応じて延長が可能です。ビザ取得には、企業からの正式な雇用契約書や健康診断結果が必要です。
居住ビザを取得すると、日本のマイナンバーに相当するエミレーツIDを申請することができます。エミレーツID保有者は、運転免許取得や銀行口座の開設など居住者としての権利を享受できます。
リモートワークビザ(Virtual Working Visa)
リモートワークビザは、国外企業に雇用されている人が、リモートワークをしながらドバイで生活できるビザです。有効期間は1年間で、更新が可能です。必要条件として、月額給与5,000米ドル以上の証明や雇用主の証明書などが求められます。
フリーランスビザ(Freelance Visa)
フリーランスビザは、特定分野の専門職が個人で働くためのビザです。IT、デザイン、教育、メディア業界に多く利用されています。
ビザ取得者は自由に仕事を選択できます。取得条件として、専門資格の証明や自己紹介資料などが必要です。
不動産ビザ(Property Owner Visa)
不動産ビザは、ドバイで一定額以上の不動産を購入した個人に発行される居住ビザです。
最低投資額は75万AED(約3,000万円相当)、有効期間は通常3年間です。条件を満たせば更新可能です。
家族ビザ(Family Visa)
家族ビザは、不動産ビザや就労ビザ保持者が、家族をドバイに呼び寄せる際に発行されるビザです。配偶者、子ども、親が主な対象者です。有効期間はスポンサーのビザに連動します。
ゴールデンビザ(Golden Visa)
ゴールデンビザは、特定の基準を満たす投資家や専門家に発行される長期滞在可能なビザです。有効期間が5年または10年と長期的な滞在が可能で、家族にも適用されます。
詳しくは、後述する「ゴールデンビザの取得要件」の章で解説します。
不動産ビザ(Property Owner Visa)とはどういうビザ?
不動産ビザは、ドバイで一定額以上の不動産を購入した個人に発行されるビザで、長期的な滞在が可能になります。ここでは、不動産ビザの特徴や取得条件、手続きについて解説します。
不動産ビザの特徴
不動産ビザを取得すると、次のような特典を享受できます。
- ドバイでの長期滞在が可能(有効期間3年、更新可能)
- 配偶者や子どもに家族ビザを取得させることが可能
- 法人設立や銀行口座開設など、ビザ保持者向けのサービスを利用可能
不動産ビザの取得要件
不動産ビザを取得するためには、次の要件を満たす必要があります。
- 最低購入額:75万AED(約3,750万円)以上の物件を購入すること
- 物件の種類:フリーホールド物件であること(所有権が認められたエリア内)
- その他要件:犯罪歴がないことや健康診断のクリアが必要
不動産ビザの取得手続き
申請手続きは次の流れで進めます。
- 不動産の正式登録:ドバイ土地局(DLD)で物件を登録します。
- 必要書類の準備:所有証明書、パスポート、健康診断結果などを用意します。
- 申請プロセス:ビザ申請のために入国し、指紋採取や写真撮影を行います。
不動産ビザの更新
更新時には、次の条件を満たしている必要があります。
- 不動産所有が継続されていることを証明する書類の提出
- 更新手数料の支払い(額は更新時に変動する場合があります)
- 健康診断やセキュリティチェックを再度クリア
ゴールデンビザ(Golden Visa)とはどういうビザ?
ゴールデンビザ(Golden Visa)は、特定の外国人に対して長期間の居住権を付与するビザで、富裕層や専門職、優秀な才能を持つ個人などを対象としています。
ゴールデンビザは取得者に安定した滞在と幅広い特典をもたらし、個人やその家族のライフスタイル向上やキャリア促進を可能にします。ここでは、ゴールデンビザの特徴や取得条件、手続きについて解説します。
ゴールデンビザの特徴
ゴールデンビザの有効期間は10年と長く、通常の短期ビザと比べて大きな安定性を提供します。この間、労働ビザの更新といった面倒な手続きは不要です。
ゴールデンビザを取得すると、申請者の配偶者や子どもも家族ビザを通じて同様の長期滞在が可能になります。科学、芸術、ビジネス、医療などの分野で優れた才能や実績を持つ個人、もしくは高額な投資を行う投資家が主な対象です。
ビザ保持者は雇用主の制約を受けず、自由にビジネス活動や就労が行えます。これにより、キャリアや事業計画の自由度が大幅に向上します。
ゴールデンビザの取得要件
ゴールデンビザを取得するためには、科学、芸術、技術、またはビジネス分野で卓越した功績を持つことが求められます。たとえば、学術的な研究成果や国際的な受賞歴が該当します。
不動産購入の場合は、200万AED以上(約8,000万円)の投資が必要です。不動産以外でも、ドバイ国内でのビジネス投資が対象となる場合があります。
高度な学歴や職歴、十分な資産保有を証明することが必要です。これにより、対象者の長期的な経済的安定が保証されます。
ゴールデンビザの取得手続き
ゴールデンビザを取得するための手続きは次のとおりです。
- オンライン申請開始:ドバイ政府が提供する専用プラットフォームで申請を行います。
- 必要書類の提出:申請者は投資証明書、財務状況報告書、学歴証明書や職歴証明書などを提出します。
- 審査プロセス:ドバイ当局による詳細な審査が実施されます。この際、健康診断やセキュリティチェックも含まれます。
- ビザ発行と家族適用:審査を通過するとゴールデンビザが発行され、申請者の配偶者や子どもにも家族ビザが付与されます。
ビザの更新
ゴールデンビザの更新は、次の手続きを行います。
- 活動の継続証明:初回申請時と同様に、専門分野での活動や投資を継続していることを証明する必要があります。
- 健康診断と背景チェック:更新時にも健康診断やセキュリティチェックが再度実施される場合があります。
- 更新可能な条件:要件を引き続き満たしている場合、ゴールデンビザは10年ごとに更新可能です。長期にわたる安心感と安定性を提供します。
ドバイでの不動産投資におけるメリット
ドバイでの不動産投資は、投資家にとって数多くのメリットをもたらします。特に税制の優遇や市場の成長性が大きな魅力です。ここでは、ドバイ不動産投資の主なメリットを解説します。
- 外国人でも不動産購入が可能
- 税制に優位性がある
- 不動産価格の上昇が見込める
- 積極的に都市開発計画が行われている
外国人でも不動産購入が可能
海外においては、外国人に不動産所有を認めていない国が多く存在します。特に、新興国では日本のマンションにあたるコンドミニアム(ドバイではアパートメント)の所有までは認めても、土地所有を認めない国のほうが多いほどです。
ドバイは外国人が不動産を購入できる、数少ない中東地域の都市の一つです。2002年以降、外国人が完全所有権を持てる「フリーホールドエリア」が設立されました。投資家は土地や建物の所有権を自由に管理し、売却や賃貸運用も可能になりました。
集合住宅であるアパートメントだけでなく、ヴィラ(戸建て住宅)、つまり土地の所有も可能です。
現地居住が条件ということもなく、非居住者も購入できます。非居住者も市場に参入可能なので、海外投資家にも大きな門戸が開かれる形となっています。
税制に優位性がある
ドバイの税制は、投資家にとって極めて魅力的な要素の一つです。不動産売却時の利益に課税されるキャピタルゲイン税(日本では譲渡所得税)が存在しないため、売却益をフルに活用できます。また、所有している物件に対する固定資産税も課されません。
個人の所得に対する税金がゼロであるため、家賃収入もそのまま純利益として得られます。また、不動産取引の多くがVAT(付加価値税)の対象外に設定されており、初期コストを抑えられるケースが多くあります。
不動産価格の上昇が見込める
ドバイの不動産市場は、長期的に見て安定的な成長が期待されています。ドバイは、経済発展と人口増加を背景に、過去数十年にわたって不動産価格の上昇を経験してきました。主要エリアでは高級住宅の需要が堅調に推移しています。
ドバイ政府の計画では、2040年までに人口を現在の2倍以上に増やすことが目指されています。この計画により、住宅需要がさらに拡大する可能性があります。
収益物件の利回りは、国際的な都市と比較しても高水準です。特に人気のある地区では、年間6~9%の利回りが期待できます。
積極的に都市開発計画が行われている
ドバイ政府は、世界有数の国際都市を目指した積極的な都市開発を進めています。ドバイの未来戦略には、住宅地区の拡大、インフラ整備、観光地の開発などが含まれています。これにより、都市全体の価値向上が期待されています。
ドバイ・マリーナやブルジュ・ハリファといった世界的ランドマークに加え、新たな商業エリアや観光施設が次々と建設されています。これにより、不動産需要が持続的に増加しています。
ドバイ不動産はバブルなのか
一部でささやかれている「ドバイは不動産バブルなのではないか」という意見についても触れておきます。
ドバイの不動産価格は過去の急上昇期と比較すると安定しており、過剰投資のリスクは減少しています。政府による規制強化もあり、持続可能な成長が進んでいます。
世界経済フォーラムや国際的な調査機関によれば、ドバイの不動産価格は実需を反映したもので、健全な市場と評価されています。
UBSが毎年発表する「グローバル不動産バブル指数」では、2024年のドバイの指数が「0.64」と評価されています。このスコアは、「適度(Moderate)」とされ、過熱したバブル状態ではないことを示しています。ちなみに、東京は「1.67」と評価されていて、ドバイよりもバブルリスクが高いと見られています。
参照元:GlobalRealEstateBubbleIndex2024
ドバイでの不動産投資のリスク
ドバイでの不動産投資は大きなメリットをもたらしますが、同時にリスクも存在します。成功する投資にはこれらのリスクを理解し、事前に対策を立てることが重要です。最後に、主なリスクを解説します。
- 為替リスク
- 価格変動リスク
- 法制度変更のリスク
- ローン利用が限定的
為替リスク
ドバイの通貨であるUAEディルハム(AED)は、米ドルと固定相場制を採用しています。そのため、新興国で発生する通貨危機リスクの心配はありません。
しかし、投資家が母国で利用する通貨が円の場合、為替変動による影響が投資収益に及ぶことがあります。円安が進行すると、AEDで得られる家賃収入や売却益は減少する可能性があります。
価格変動リスク
不動産市場は世界的な経済動向の影響を受けやすく、ドバイも例外ではありません。
リーマンショックの際には、ドバイ不動産市場も大きな価格下落を経験しました。現在は市場の安定化が進んでいますが、世界的な経済変動が再び価格に影響を及ぼす可能性があります。
長期的な視点で物件を保有し、短期的な価格変動に左右されない投資戦略を取ることが重要です。
法制度変更のリスク
ドバイの不動産取引はしっかりとした法律や規制によって支えられていますが、法律・規制は改正される場合もあります。特に、税制に関する改正は投資家に影響を与える可能性があります。
現在、不動産に関する税は非常に優遇されていますが、将来的に改正されて新たな課税が導入される可能性も否定できません。法制度に関する最新情報を常に把握し、変更に備えた柔軟な投資計画を立てておきましょう。
ローン利用が限定的
ドバイでの不動産投資は、自己資金が多く必要となる場合が一般的です。
特に外国人投資家に対しては、ローン条件が制限されています。銀行は投資用不動産に対して貸付比率を制限しており、融資額が物件価格の50~70%に抑えられるケースが多くあります。
日本では金融機関の融資を活用してレバレッジをかける不動産投資が一般的ですが、ドバイではレバレッジ戦略は採用できません。十分な自己資金を準備しておきましょう。
まとめ
ドバイの不動産ビザやゴールデンビザは、ドバイ移住や投資を考える人々にとって非常に魅力的な選択肢です。また、不動産投資のメリットとして、税制の優遇措置や将来的な価格上昇の見通し、安定した家賃収入が期待できる点が挙げられます。
ドバイの不動産市場は、今後も成長の可能性を秘めています。移住や投資を検討している方は、このチャンスを活かし、ドバイライフをスタートさせてみてはいかがでしょうか?