ドバイは、近年急速に発展を遂げ、世界中の投資家や移住希望者から注目を集めています。不動産市場は特に活況を呈しており、多くの外国人が物件購入を始めています。しかし、異国の地での不動産取引には不安がつきものなのも事実です。
今回は、ドバイの不動産市場の特徴や外国人が物件を購入する際のルール、信頼できる不動産エージェントの選び方などを詳しく解説します。
成長著しいドバイ不動産市場の特徴
ドバイの不動産市場は、中東地域の中心地としての地理的優位性と、継続的な経済成長によって国際的に高い評価を得ています。ドバイ政府も不動産市場を国家の成長戦略の一環として位置付けており、都市開発や規制緩和などの取り組みを積極的に進めています。ここでは、ドバイ不動産市場の特徴について解説します。
- 不動産価格の上昇が続いている
- 都市開発計画への期待が大きい
- タックスヘイブンが世界中から注目を集めている
不動産価格の上昇が続いている
ドバイの不動産価格は、過去数年間にわたって堅調に推移しており、その成長の勢いは世界的に見ても際立っています。2024年のアパートメント総販売価格が2,629億ディルハム(10兆5,160億円)となっており、これは2020年の309億ディルハム(1兆2,360億円)の8.5倍にものぼっているのです。
出典:DXB Interact
この背景には、観光業やテクノロジー分野の発展、2020年のドバイ万博の成功などが挙げられます。さらに、中国経済の不安定化を背景としたドバイへの資金移動や、ウクライナ侵攻後の経済制裁によってロシアの富裕層が資産の避難先としてドバイを選択していることも、大きな要因として挙げられます。
都市開発計画への期待が大きい
ドバイでは、未来を見すえた都市開発計画である「ドバイ2040都市マスタープラン」が進行中です。この計画では、ドバイをより住みやすい持続可能な都市に変革することを目的としており、次の目標を掲げています。
- 780万人への人口増加
- 既存とあわせ5つの都市中心部の建設
- メトロ&トラムによる交通システムの充実
- 商業活動のための土地面積は168平方キロメートルに増加
- 公共ビーチの長さを400%増加
不動産市場の観点では、インフラ整備や新興エリアの開発が進み、まだ注目されていない地域の価値が今後大きく上昇する可能性もあります。
タックスヘイブンが世界中から注目を集めている
ドバイ最大の魅力の一つは、その税制優遇にあります。所得税やキャピタルゲイン税(譲渡所得税)、住民税などが存在しないため、取得した収益不動産の家賃収入や、物件売却時に得た収益に対して課税されません。不動産による収益を最大限に享受できるため、富裕層を中心に人気を集めています。
法人税は2023年に導入されましたが、税率は9%と日本や欧米諸国と比べても低く、法人税の課税対象となるのは、アラブ首長国連邦国内での年間所得が37万5,000ディルハム(約1,500万円)を超える企業のみです。法人所得がこの基準額を下回る場合、法人税は課されません。
タックスヘイブン政策は、アジア・ヨーロッパ・ロシア・インドなど各国の高所得者層を呼び込み、グローバルな富の集積地としてドバイの地位を確固たるものにしています。
外国人のドバイ不動産購入ルール
ドバイでは、外国人でも制約なく不動産を売買できますが、不動産取引のルールが存在します。ルールを正しく理解し、適切に対応することが、スムーズな取引と将来的なトラブル回避の鍵となります。ここでは、外国人がドバイ不動産を購入する際のルールについて解説します。
- 特別な資格や条件はない
- フリーホールドエリアが決められている
- 投資家向け居住ビザ制度がある
特別な資格や条件はない
ドバイでは、外国人でも不動産の購入が可能で、購入のために特別な資格や条件は不要です。これは、ドバイ政府が外国人投資家を積極的に受け入れる政策の一環となっています。
新興国では、外国人が完全な所有権付きの不動産を購入できないケースは多く、コンドミニアム(アパートメント)は購入可能でも、土地付きの戸建て住宅は購入できないなどの制限が見受けられます。その点、ドバイは外国人にも不動産購入の門戸が開かれているため、海外不動産投資を検討している方には、最有力候補となりえるでしょう。
ただし、購入可能なエリアや手続きには一定の制限があるため、事前に確認が必要です。
フリーホールドエリアが決められている
外国人が不動産を購入できるのは、「フリーホールドエリア」と呼ばれる地域に限られます。これらのエリアでは、外国人でも土地や建物の所有権を取得することが可能です。
フリーホールドエリアは、ドバイ政府が外国人投資家向けに指定した地域であり、都市の発展や投資促進を目的としています。
投資家向け居住ビザ制度がある
ドバイでは、一定額以上の不動産を購入することで、長期滞在可能な居住ビザを取得できる制度があります。不動産購入によって取得できる居住ビザは、次の2つです。
- 不動産ビザ(Property Owner Visa)
- ゴールデンビザ(Golden Visa)
不動産ビザを取得するには、次の取得要件を満たす必要があります。
- 75万ディルハム(約3,000万円)以上の不動産を購入する
- 指定されたエリア内の不動産を購入する
- 購入対象は所有権(フリーホールド)の物件
- 犯罪歴やセキュリティチェックをクリアする
不動産ビザの取得によって、2年間の滞在が可能になります。また、申請者の配偶者や子ども、さらには両親にも家族ビザが付与されます。
ゴールデンビザは、5年間または10年間の長期的な滞在を可能にする居住ビザです。他の居住ビザと比べても滞在期間が非常に長く、優遇されたものとなります。主な要件には次のものがあります。
- 200万ディルハム(約8,000万円)以上の不動産投資
- 融資を活用する場合、アラブ首長国連邦(UAE)指定の銀行からの借り入れに限定
- 不動産は申請者名義で完全所有する
ゴールデンビザにおいても、家族ビザ付与の特典があります。
ドバイの不動産購入は、資産運用だけでなく、移住と生活の拠点としても大きな魅力を持っています。投資家にとっては、投資による収益と自身の生活の両立が期待できる選択肢といえるでしょう。
ドバイの不動産取引に重要なRERA制度とは
ドバイで安心・安全な不動産取引を行うためには、RERA(ドバイ不動産規制庁)制度の理解が不可欠です。RERAは、不動産市場の健全な成長と投資家保護を目的に設立された政府機関であり、取引の透明性や信頼性を支える中核的存在です。
国内外の投資家にとっては、不動産取引のリスクを最小限に抑えるためのガイドラインを提供しており、法制度面での重要なバックボーンとなっています。
ドバイ不動産規制庁(Real Estate Regulatory Authority)
RERAは、2007年にドバイ土地局(DLD)の一部門として設立された、不動産市場の監督と規制を担う公的機関です。主な目的は、不動産業界におけるすべての活動を監視し、取引の透明性と安全性の確保にあります。
具体的には、不動産売買や賃貸契約に関わるルールを整備し、エージェントやデベロッパー、管理会社といった関係者に対するライセンス管理を行っています。契約不履行などのトラブル発生時には、RERAが中立的な立場で調停に関与し、公正な解決を図る制度も整備されています。
このような枠組みにより、ドバイの不動産市場は国際的にも高い評価を得ており、世界中の投資家を惹きつけているのです。
ライセンス制度の概要
ドバイで不動産業に従事するには、RERAから正式なライセンスを取得することが法的に義務づけられています。事業者の専門性や倫理性を担保する仕組みとして導入されており、無許可での営業は重大な違法行為とみなされ、罰則の対象となります。
ライセンスを取得するためには、所定のトレーニングや資格試験を受ける必要があり、ドバイで活動するすべての正規事業者はこのプロセスを経ています。顧客はライセンスの有無を一つの判断材料として、信頼できるエージェントや業者を選ぶことができるのです。
ライセンスの種類
RERAでは、不動産関連の業務内容に応じて複数のライセンスを発行しています。それぞれの業種ごとに定められた基準と要件があり、ライセンスの内容は業務範囲に明確にひもづいています。
仲介業者向けライセンス
このライセンスは、売買や賃貸を仲介するエージェントに対して発行されるもので、物件の紹介や契約書の作成、交渉の代行などを行う際に必須とされます。エージェントはRERAの公式トレーニングを修了し、実務的な知識と法的理解を身につけたうえで、このライセンスを取得する必要があります。
開発業者向けライセンス
開発業者、いわゆるデベロッパーが新築プロジェクトを手がけたり、物件を市場に販売したりする際には、このライセンスが必要です。プロジェクトごとの事前登録やエスクロー口座の開設といった要件も含まれ、投資家の資金が適切に運用されるよう、厳格な管理体制が敷かれています。
管理業者向けライセンス
集合住宅やオフィスビルなどの管理・運営を行う企業には、管理業者向けのライセンスが求められます。このライセンスにより、建物の保守や修繕、テナントとのやり取りなど、日常的な管理業務を遂行するための正当性が与えられます。住環境の質に直結するため、この分野でもRERAの監視は厳格です。
不動産評価向けライセンス
不動産の査定や価格評価を行う専門家には、評価ライセンスが必要です。このライセンスによって、正確かつ信頼性のある評価書を作成することができ、金融機関によるローン審査や資産管理にも活用されます。
正規ライセンス保有者の確認方法
不動産購入希望者が、取引前にエージェントの信頼性を確認するには、RERAの公式Webサイトや「Dubai REST」アプリを活用するのが一般的です。これらのツールでは、ライセンス番号の検索機能が提供されており、登録された正規事業者かどうかを簡単に照会できます。
信頼できるエージェントを選ぶポイント
ドバイに限りませんが、海外での不動産取引を成功させるには、信頼できるエージェントへの依頼が何よりも重要です。極論すれば、「何を」買うかよりも「誰から」買うかのほうが大切とすらいえるのです。最後に、信頼できるエージェントを選ぶポイントについて解説します。
- ライセンスを確認する
- 日本語対応や現地のサポート体制も確認する
- 過去の実績を調べる
- 口コミを調べる
ライセンスを確認する
ドバイで不動産取引を行う際には、エージェントがRERA(不動産規制庁)から正式なライセンスを取得しているか確認します。先ほど解説したように、RERAライセンスはエージェントが法的に認可された不動産取引の専門家であることを示すもので、信頼性の証となるものです。
ライセンスの有無や詳細は、ドバイ土地局(Dubai Land Department)の公式ウェブサイトや「Dubai REST」アプリを通じて確認できます。エージェントのライセンス番号、所属する会社、取引履歴、取り扱ったプロジェクトなどの情報を閲覧し、確認するようにします。
日本語対応や現地のサポート体制も確認する
言語の壁を感じずにスムーズな取引を行うには、日本語対応が可能なエージェントが望ましいでしょう。契約書の内容や法的手続きに関する説明を正確に理解するためには、母国語でのコミュニケーションが必要です。
また、現地での内覧や契約手続き、アフターサービスなどのサポート体制も確認しましょう。信頼できるエージェントは、物件選定から契約、入居後のフォローまで一貫したサポートを提供してくれます。
過去の実績を調べる
エージェントの過去の実績は、信頼性や専門性を判断する材料となります。取扱物件数、成約率、過去の取引事例などを確認し、どのようなタイプの物件や顧客に強いのか把握しましょう。
エージェントが特定のエリアや物件タイプに特化している場合、その分野での専門知識やネットワークを持っている可能性が高いといえます。それを活かせば、自身の希望や条件に合った物件を効率的に探せます。
口コミを調べる
GoogleレビューやSNS、掲示板での評判も大切な判断材料になります。実際にそのエージェントを利用した人々の体験談は、公式サイトだけでは見えないリアルな情報を提供してくれるでしょう。
対応の丁寧さやレスポンスの早さ、トラブル発生時の対応力など、サービスの質に関する内容は要チェックです。ただし、インターネット上の情報については、その信ぴょう性にも注意する必要があります。可能であれば、複数の情報源を比較するようにします。
まとめ
急成長するドバイの不動産市場は、多くの投資家にとってチャンスの宝庫です。経済成長、都市計画の進行、税制優遇など、投資環境として非常に魅力的な要素がそろっています。
一方で、異国での不動産取引にはリスクも伴います。信頼できる不動産エージェントの存在が、その成功を大きく左右するといっても過言ではありません。RERAのライセンス確認、日本語対応の有無、実績や口コミの確認など、事前にしっかりとリサーチを行い、納得のいく取引を進めるようにしましょう。