ドバイ不動産投資は、高い利回りや税制優遇などの魅力から海外投資先として注目を集めています。一方で、それが「投資」である限り、リスクも確実に存在します。今回は、ドバイ不動産投資のリスクとメリットを徹底的に解説し、失敗しないための実践的な対策を紹介します。
経済と比例して拡大するドバイの不動産市場
ドバイは中東における経済、金融、観光のハブとしてその存在感を高め続けています。アラブ首長国連邦(UAE)の中でもドバイ首長国は、自由貿易政策、税制優遇、そしてインフラ整備に積極的な姿勢を見せており、それにともない国内外からの投資が集まっています。
人口増加と賃貸需要拡大が続いている
2025年5月の時点で、ドバイの人口は約394万人に達しています(※)。人口増加の背景には、観光産業の復調、エネルギー産業以外の多様な産業育成、柔軟なビザ政策が挙げられます。
人口が増加すれば必然的に住宅需要が高まりますが、ドバイでは新規の住宅供給がそのスピードに追いついていない状況が続いています。市内中心部や、パーム・ジュメイラ、ドバイ・マリーナ、ダウンタウンなどの人気エリアでは、賃貸物件の需要が極めて高く、家賃が年々上昇しています。
継続的な人口流入と、それにともなう住宅需要の拡大は、不動産投資家にとって大きなインカムゲインのチャンスとなります。
積極的な都市開発計画を行っている
ドバイ政府は、2040年を見据えた壮大な都市開発ビジョン「ドバイ・都市マスタープラン2040」を打ち出し、未来志向の都市設計を本格的に進めています。具体的には、既存の都市中心部だけでなく、郊外地域にもバランスよく開発を分散させることが掲げられており、住宅地の拡大、公園や緑地の整備、教育・医療施設の充実、そして交通インフラの強化が含まれています。
ドバイは2030年までに公共交通機関の利用率を倍増させる目標を掲げており、地下鉄や路面電車の延伸、バス路線の再整備も進行中です。これにより、交通利便性の高いエリアにおける不動産価値の上昇も期待されています。都市のインフラ整備が進むことで、これまで開発が遅れていたエリアにも投資の波が広がりつつあります。
法制度が外国人投資家に開かれている
ドバイでは、2002年にフリーホールド制度が導入されて以降、外国人でも指定されたエリアにおいて土地・建物を完全所有することが可能となりました。外国人投資家が資産としての不動産を安定的に保有できる法的な枠組みが整い、世界中からの投資を呼び込む大きな要因となっています。
ドバイ政府は不動産取引における透明性を高めるため、電子契約システムや登記制度のデジタル化を進めており、外国人にとっても取引の信頼性が向上しています。
近年では外国企業の100%外資所有も許可されるようになっており、法人による不動産取得も現実的な選択肢となっています。投資金額に応じて長期滞在可能なビザ(不動産ビザやゴールデンビザ)の取得が可能であるため、不動産投資と併せて生活拠点の確保を検討する富裕層にとって大きな魅力となっています。
ドバイ不動産投資に潜む5つのリスク
ドバイ不動産投資は高い利回りと成長性が期待される一方で、必ずしもリスクフリーではありません。市場が急成長しているからこそ、注意すべき落とし穴も存在します。ここでは、ドバイ不動産投資の主なリスクを5つ解説します。
- 価格変動リスク
- 為替リスク
- 融資が活用できないリスク
- 法務リスク
- 詐欺のリスク
価格変動リスク
不動産投資におけるもっとも基本的なリスクの一つが、価格の変動です。ドバイ市場においても例外ではなく、過去には大きな価格下落を経験しています。とりわけ2008年のリーマン・ショックに続く2009年の「ドバイショック」では、不動産価格が短期間で最大60%以上も下落しました。
外的要因や世界経済の動向によって、ドバイの不動産市場は大きく揺れ動く可能性は否定できません。トランプ関税の行方、原油価格の変動、グローバルな金融政策などが市場に影響を与える可能性はつねに存在しています。
昨今、ドバイ不動産市場は堅調に推移していますが、価格変動をつねに意識し、短期的な利益だけでなく中長期的な視点での投資判断が重要です。
為替リスク
ドバイの通貨であるディルハム(AED)は、米ドルと連動して固定相場制を採用しています。これは、為替の安定性を確保するという意味ではプラスに働く要素ですが、日本円で資金を運用する日本人投資家にとっては、為替リスクを考えなければなりません。
購入時に円高であった場合、売却時に円安に振れていれば為替差益を得られる可能性がありますが、その逆であれば為替差損を被ります。物件価格が上昇していても、為替の影響で最終的な収益が大きく削られる可能性もあります。
為替の動きを完全に予測することは不可能ですが、ある程度のレンジやシナリオを想定しておくと、損失回避に役立ちます。
融資が活用できないリスク
日本国内での不動産投資では、金融機関から融資を受けてレバレッジを効かせる投資戦略が一般的ですが、ドバイにおいては事情が異なります。多くの現地銀行は外国人に対する住宅ローンの審査を厳しく設定しており、金利も高めに設定されています。
デベロッパーによる分割払いもありますが、ドバイでの不動産投資は現金一括購入が主流となっています。日本の金融機関による海外不動産ローンもありますが、日本国内で相当の不動産を所有しているなどの要件が求められるため、慎重な判断が求められます。
ドバイ不動産投資を検討している投資家は、自己資金を多めに用意しておく必要があるのです。
法務リスク
ドバイの不動産取引は透明性が担保されていますが、政治的・経済的な判断により外国人の不動産所有に関する法律や税制が突如変更されるリスクも否定できません。現在はフリーホールド制度により外国人にも所有権が認められていますが、制度変更が行われた場合、既存の所有者にも影響が及ぶ可能性があります。
法務リスクに備えるためには、契約前に専門の弁護士や不動産コンサルタントに相談し、契約書の内容を細部まで理解しておく必要があります。また、税制の改正については、過去にも経験がありますので、最新の情報をキャッチするようにしましょう。
詐欺のリスク
ドバイでは、厳格なライセンス管理制度が存在するため、正規の不動産仲介会社やデベロッパーが詐欺行為を行うリスクは低いといえます。ただ、水面下では、未登録のエージェントやライセンスを持たない個人が動いており、悪質な詐欺事件も発生しています。
日本人が日本人を騙す事案も発生しており、日本国内で詐欺セールスが行われるとドバイ当局としても取り締まれないのが実情です。
具体的には、存在しない物件の販売、二重売買、無許可での代理販売、偽造書類の使用など、さまざまな詐欺手口が確認されています。詐欺のリスクを避けるためには、取引相手が信頼できるライセンス保有の不動産会社であることを確認するようにします。不動産会社の登録情報は、ドバイ土地局(DLD)の公式ウェブサイトから確認可能です。
ドバイ不動産投資の5つの主なメリット
ドバイ不動産投資のリスクを見てきましたが、ドバイ不動産投資には大きな魅力もあります。ここでは、ドバイ不動産投資における代表的な5つのメリットについて解説します。
- 税制上の優遇措置がある
- 法制度が安定している
- 高い利回りが狙える
- 資産価値が上昇している
- 居住ビザが取得できる
税制上の優遇措置がある
ドバイ最大の魅力の一つが、税制上の優遇措置です。ドバイを含むUAEでは、個人の所得税、キャピタルゲイン税(資産売却益に対する税金)、固定資産税が存在しません。不動産投資から得られる家賃収入や売却益に対して、課税される心配がないという大きなメリットがあります。
日本や欧米諸国では、不動産所得に対する所得税が課され、物件売却益に対してもキャピタルゲイン税が発生します。ところが、ドバイではこうした税負担がなく、投資収益をフルに享受できる環境が整っているのです。
ただし、こうしたドバイ税制の恩恵を享受するには、実際にドバイに移住し日本の「非居住者」とならなければなりません。日本に居住している限り、ドバイでの不動産所得も日本での課税対象となりますので、その点は注意が必要です。
法制度が安定している
ドバイでは、2000年代以降国際基準に準拠した法整備が急速に進められており、現在では高いレベルの法的安定性が確保されています。フリーホールドエリアでは、外国人に対しても明確な所有権が認められ、土地・建物を100%自己名義で所有できます。
UAEは、外国資本の誘致を国家戦略の一つとして位置付けており、投資家の信頼を高めるために制度の透明化と公正な運用を徹底しています。不動産の登記制度は電子化されており、所有権や取引履歴はドバイ土地局(DLD)を通じて明確に管理されています。不動産仲介会社にはライセンス制度が導入されており、登録業者以外の営業は禁止されています。
こうした制度により、投資家は信頼できる会社と安全に取引ができ、トラブルのリスクも低減されています。
高い利回りが狙える
ドバイの不動産市場は、世界的に見ても高利回りを実現できる市場として知られています。エリアや物件タイプによりますが、利回りで5~9%を得られるケースも珍しくありません。これは、東京やロンドン、ニューヨークなどの主要都市に比べて非常に高水準です。
高利回りの背景には、旺盛な賃貸需要と観光・短期滞在者向けのホリデーレンタル市場の存在があります。適切な物件選定と運営管理ができれば、安定したインカムゲインが期待できるでしょう。
資産価値が上昇している
ドバイは都市インフラの整備と経済成長を背景に、不動産価格の上昇が続いています。資産価値の上昇は、キャピタルゲインの獲得につながります。ドバイは都市開発が進行中であり、住宅需要やインフラ投資がさらに進むことから、長期保有による資産価値の上昇が見込まれます。
居住ビザが取得できる
ドバイで不動産を一定額以上投資することで、居住ビザの取得が可能です。具体的には、最低75万AED(約3,000万円)以上の不動産を所有すると滞在期間2年間の「不動産ビザ」が発給され、200万AED(約8,000万円)以上の投資を行えば、5年または10年間有効な「ゴールデンビザ」の取得資格が得られます。
この制度は、投資を通じてドバイ社会に貢献する外国人を呼び込むために設けられたもので、長期的な生活やビジネス展開の基盤を築くことができる点が評価されています。単なる投資先としてだけでなく、「住める資産」としての魅力もドバイ不動産の特徴です。
ドバイ不動産投資で失敗しないための実践的対策
ドバイ不動産投資を成功させるには、リスクの正しい理解とそれへの対策が重要です。最後に、ドバイ不動産投資で失敗しないための実践的な対策について解説します。
- 事前のデューデリジェンスを徹底する
- 自己資金に余裕を持つ
- 信頼できるエージェントに依頼する
事前のデューデリジェンスを徹底する
不動産投資の成否を左右する基本的かつ重要なステップが、デューデリジェンス(適正評価)の実施です。購入を検討している物件に関するあらゆる情報を契約前に調査・精査し、投資判断の材料とするプロセスです。
物件の立地、築年数、周辺環境、過去の価格推移、将来的な開発計画の有無など、ハード情報をしっかり確認します。その際には、ドバイ土地局(DLD)が提供するオンラインの不動産取引情報や、RERA(不動産規制庁)のデータベースを活用します。
売主(デベロッパーなど)の信用調査も重要です。過去のプロジェクトでの実績や顧客からの評判、法的トラブル歴の有無などを確認し、信頼できる会社かどうかを見極めましょう。未完成物件(オフプラン物件)を購入する場合は、開発スケジュールの現実性や資金調達体制も慎重にチェックする必要があります。
自己資金に余裕を持つ
日本国内の不動産投資と大きく異なる点として、ドバイでは外国人向けローンの利用が限定的であるという現実があります。基本的には現金での一括購入が主流となっており、投資家は十分な自己資金の用意が前提となります。
物件購入時には物件価格に加え、登記費用、仲介手数料、管理費、保険料など諸経費が発生します。突発的な修繕費や空室期間による家賃収入の減少など、運用中のコストも想定しておく必要もあります。余裕を持った資金計画が、不安の少ない投資活動を支える鍵となります。
信頼できるエージェントに依頼する
ドバイの不動産市場は外国人投資家にとって開かれた環境にありますが、その反面、市場の構造や商習慣が日本とは大きく異なるため、現地の事情に精通したパートナーの存在が必要です。
ドバイで活動する不動産エージェントは、RERAによって公式にライセンスを付与されており、その情報は誰でも確認可能です。ライセンスを持たないエージェントやブローカーも存在するため、最初に必ずRERAのライセンス番号を確認し、正規事業者かどうかを見極めましょう。
信頼できるエージェントは、単に物件を紹介するだけでなく、物件の適正価格、市場の需給状況、法的手続きの流れ、将来的なリセール戦略に至るまで、包括的にアドバイスを提供してくれます。選定にあたっては、SNSやGoogleレビュー、地元メディアでの評判など、あらゆる手段を用いて比較・検討しましょう。
まとめ
ドバイ不動産投資には、魅力的な成長機会と高利回りという大きなポテンシャルがありますが、成功するためには市場特有のリスクを的確に把握し、事前に準備と対策が求められます。
市場の状況は常に変化しており、法規制や経済動向による影響も避けられません。つねに最新の情報にアンテナを張り、柔軟な思考と判断力が海外不動産投資における成功への鍵といえるでしょう。