アルダール・プロパティーズは、アブダビを拠点とする最大手の不動産開発会社です。政府系企業としての独自の立ち位置を最大限に活かし、アラブ首長国連邦の不動産市場を力強く牽引しています。大規模な都市開発から、未来を見すえた重要プロジェクトまで、その影響力は計り知れません。
今回は、アルダールのビジネスモデルから、アブダビ不動産市場で圧倒的な存在感を持つ理由、そして投資家にとってのメリット・リスクまで、その全貌を徹底的に掘り下げて解説します。
アルダール・プロパティーズとは
アルダール・プロパティーズはどのような企業なのでしょうか?ここでは、その概要を解説します。
アルダール・プロパティーズの会社概要

Aldar Properties(アルダール・プロパティーズ)は、2004年に設立された不動産開発会社です。本社はアラブ首長国連邦(UAE)の首都・アブダビに位置します
アルダール・プロパティーズの主要な事業は、「Aldar Development」と「Aldar Investment」の2社が担っています。Aldar Developmentは不動産開発と管理を担当し、Aldar Investmentは投資事業を担当しています。
UAE不動産市場におけるリーダーシップ
アルダール・プロパティーズは、アブダビとドバイを含むUAE全体の最大手の不動産デベロッパーの1社で、UAE全体の経済成長を牽引する担い手となっています。
アルダール・プロパティーズの時価総額は、2025年6月9日時点で650億2,000万AED(約2兆6,000億円)となり、競合他社のエマール・プロパティーズ(Emaar Properties)の1,180億AED(約4兆7,200億円)に次ぐ巨大開発会社となっているのです。
政府系企業としての影響力
アルダールは、政府と民間資本が融合した半官半民企業です。アブダビ政府と密接に連携し、都市計画から実行までを一体的に進めています。この特性により、アブダビの不動産需給を実質的にコントロールし、市場の安定化に貢献しています。
アルダールはアブダビの長期的な都市開発計画と深く連携し、付加価値の高い土地への優先的なアクセスを可能にしています。
外国人が購入できるアブダビの物件の約9割に同社が関与しており、その強い影響力は実質的に市場を独占しています。投資家の目線からすると、価格変動リスクの低い物件購入を可能にしているといえるでしょう
アルダール・プロパティーズの事業内容
続いて、アルダール・プロパティーズの事業内容を紹介します。
不動産開発
不動産開発はアルダール・プロパティーズの中核をなす事業で、住宅、商業施設、複合施設など、多岐にわたる不動産開発を手がけています。アブダビの象徴的な開発地域であるヤス島、サディヤット島、リーム島、アル・ラハ・ビーチなどで大規模な開発行為を展開しています。
アブダビ政府と連携した都市計画にもとづき、市場の需要と供給のバランスを綿密に考慮しながら、建設する物件の数と種類を決定し、開発を進めています。計画的な都市の成長と、市場ニーズに合致した質の高い不動産供給の両方を実現しているのです。
不動産投資
不動産投資は、アルダールのもう一つの主要事業であり、オフィスビル、商業施設、小売施設など、多様なポートフォリオへの戦略的投資を行っています。これらの投資ポートフォリオは、安定した収益を生み出す資産で構成されており、高い賃貸利回りと所有不動産の含み益を実現しています。
ヤス島やサディヤット島では、初期のプロジェクトが完成した後、不動産市場で価格が2倍から4倍に高騰した事例もあり、アブダビ不動産市場の強い成長性とアルダールのプロジェクトの価値創造能力を示しています。
国際市場への進出
アルダール・プロパティーズは、UAE国内での強固な基盤を活かしつつ国際市場への拡大を積極的に推進しています。
2023年12月、アルダールはイギリスの高級住宅デベロッパーであるロンドン・スクエアを2.3億ポンド(約445億円)で買収しました。これは、アルダールにとってMENA(中東・北アフリカ)地域外での初の国際買収であり、同社の国際展開戦略における重要な一歩となりました。
アルダールが手がけた主要プロジェクト
アルダール・プロパティーズは、UAE、特にアブダビにおいて、数々の象徴的なプロジェクトを手がけてきました。ここでは、アルダールが手がけた主要プロジェクトを紹介します。
ヤス島
アルダール・プロパティーズは、F1アブダビグランプリが開催されるヤス・マリーナ・サーキットや、フェラーリ・ワールドといった世界的に有名なアトラクションの主要な開発会社です。また、ヤス・モールのような大規模な商業施設も手がけています。
最近では、高級住宅プロジェクト「Waldorf Astoria Residences YAS」が発表され、その高級志向とヤス島のグローバルな魅力により、発売日に完売を記録しました。
サディヤット島
アルダール・プロパティーズは、サディヤット島の文化地区に位置する「Mamsha Gardens」、「Mamsha Palm、Mandarin Oriental Residences」などの高級住宅プロジェクトを開発しています。
ドバイにおけるプロジェクト
アルダールはアブダビを拠点とする企業ですが、近年、ドバイへの戦略的な拡大を加速させています。UAE最大の経済ハブであるドバイ市場の成長機会を捉えるための重要な動きといえます。
2023年にはドバイ・ホールディングと戦略的パートナーシップを締結し、ドバイ不動産市場への本格参入を果たしました。
アルダール・プロパティーズの投資家にとってのメリット
続いては、投資家がアルダールのプロジェクトへ投資するメリットを解説します。
- 政府系企業として安定している
- 高い利回りの実績がある
- ESGへの取り組みが評価されている
政府系企業として安定している
アルダールはアブダビ政府からの継続的な支援があるため、倒産リスクが極めて低く、長期的な資産価値の向上が期待できます。
また、アブダビで外国人が買える物件の約9割を手がけているので、不動産の需給バランスを管理し、安定した売上を得ています。市場が大きく変動しても、アルダールは影響を受けにくく、この圧倒的な存在感が会社の強みになっているのです。
さらに、住宅やオフィス、学校、ホテル、物流施設など、さまざまな種類の不動産を扱っており、リスク分散を図っていることも特徴です。
高い利回りの実績がある
運用利回りが6.3〜8%と高く、販売価格から完成時までの不動産価格の値上がりが20~35%と、魅力的なリターンを提供しています。ヤス島やサディヤット島での初期プロジェクトが市場で2〜4倍に高騰した事例は、この潜在的なリターンを裏付けています。
ESGへの取り組みが評価されている
2050年までの温室効果ガス排出実質ゼロ目標や包括的なCSR活動など、持続可能性への高いコミットメントは、ESG投資を重視する世界の投資家にとって魅力的です。アルダールのESGへの取り組みは、長期的な企業価値向上とブランドイメージの強化に寄与します。
アルダール・プロパティーズの投資家にとってのリスク
格付け機関フィッチ・レーティングスのレポートによると、ドバイでは2026年に新築住宅の大量供給が予測されており、不動産価格の調整(最大15%下落)が発生する可能性があります。アルダールのドバイ市場への急速な拡大は、このリスクに直面する可能性があります。
まとめ
アルダール・プロパティーズは、政府との強固な連携、多角的な事業展開、革新的なプロジェクト、持続可能性への深いコミットメントによって、UAE不動産市場におけるリーダーシップを確立しています。
ドバイ市場への拡大は、同社が今後も成長を続けるための重要なプレイヤーとなるでしょう。投資家にとって、アルダールは安定性と成長潜在力を兼ね備えた、魅力的な投資対象であると評価できるでしょう。