ドバイは中東を代表する経済都市として急成長を遂げており、不動産市場にも世界中の投資家から熱い視線が注がれています。
ドバイの不動産市場において、「安い」物件をうまく見つけられれば、高い利回りや将来の売却益も期待できます。今回は、ドバイの不動産市場の基礎情報から、狙い目となるエリア、投資時の注意点までを解説します。
ドバイ不動産市場の基本情報
ドバイの不動産市場を正しく理解するために、まずは基本情報を押さえておきましょう。ここでは、ドバイ不動産市場の基礎となる経済成長、市場の成長性、税制のメリット、居住ビザ取得制度といったポイントについて解説します。
ドバイ経済は急成長を続けている
ドバイ経済は、この数十年で劇的な変化を遂げてきました。アラブ首長国連邦は石油資源によって発展した地域ではありますが、ドバイに関しては石油依存度が非常に低くなっており、観光業、金融業、物流業を中心とした多角的な経済構造が形成されています。
観光業においては、世界一高い建物であるブルジュ・ハリファや世界最大級のモール、超高級ホテルなどを有し、世界中から訪れる観光客によって莫大な収入を得ています。ドバイ国際空港は国際旅客数でつねに世界トップクラスの規模を誇っており、物流のハブとしても機能しています。
経済の発展が背景にあるからこそ、不動産市場への投資にも信頼性と将来性が見込まれているのです。
今後も不動産市場の成長が見込まれている
現在のドバイ不動産市場はすでに世界的に注目される水準にありますが、今後もさらなる成長が見込まれています。その理由の一つが、政府主導の大規模な都市開発プロジェクトの推進です。
ドバイ・サウス地区の再開発や、メトロの延伸計画、大規模住宅開発プロジェクトなどが着実に進行しており、それらに関連するインフラ整備も急速に進んでいます。新たな居住エリアや商業エリアの需要が高まることが予想され、物件の資産価値上昇にもつながると期待されているのです。
外国人投資家の参入を促進する政策も引き続き展開されており、国際的な資本の流入がドバイの不動産市場をさらに活性化させる要因となっています。
タックスヘイブン政策に注目が集まっている
ドバイが投資先として世界中の富裕層や企業に注目されているもう一つの大きな理由は、税制面での圧倒的な優位性です。ドバイでは所得税が課税されない、いわゆるタックスヘイブン政策を採用しています。個人が得た所得に課税されないため、手取りが非常に高くなる傾向にあります。
法人税は2023年に導入されましたが、9%と税率が低く、年間所得が37万5,000ディルハム(約1,500万円)を超える企業のみに課税される仕組みです。法人所得がこの基準額を下回る場合、法人税は課されないため、法人設立による節税対策も有効といえるでしょう。
高所得者層や企業経営者にとっては、節税手段として非常に魅力的な環境であり、税制メリットを最大限に活用する目的で、ドバイへの不動産投資を行うケースも増えています。タックスヘイブン政策は、国際的な競争力のある不動産市場の形成にもつながっており、ドバイという都市のブランド価値をさらに高めている要因でもあります。
不動産購入によって居住ビザが取得できる
ドバイでは、一定額以上の不動産を購入すると長期の居住ビザを取得できる制度が導入されています。この制度は外国人投資家や移住希望者にとって魅力となっており、資産の運用先としてだけでなく、生活の拠点としてもドバイを選ぶ理由の一つとなっています。
不動産購入によって取得できる居住ビザは、不動産ビザ(Property Owner Visa)とゴールデンビザ(Golden Visa)です。不動産ビザを取得するためには、75万ディルハム(約3,000万円)以上の不動産を購入するなどの要件が必要とされ、ビザ取得が認められると2年間の滞在が可能になります。
ゴールデンビザは、5年間または10年間の長期的な滞在を可能にする居住ビザです。他の居住ビザと比べても滞在期間が非常に長く、優遇されたものとなりますが、要件としては200万ディルハム(約8,000万円)以上の不動産購入が必要になるなどのハードルがあります。
ドバイで「安い」不動産とは
ドバイの不動産市場は高級物件が注目されがちですが、実は比較的手頃な価格で購入できる物件もあります。近年では、東京23区のマンションの平均価格が1億円を超えているので、東京よりも安い物件が存在しているのです。
新たに都市開発が進むエリアや新興住宅地では、価格が抑えられていながらも将来性が見込める物件が豊富にあります。
アパートメントが狙い目
ドバイで安価かつ収益性の高い不動産を探すのであれば、アパートメントは非常に有望な選択肢です。アパートメントは主に鉄筋コンクリート製の共同住宅で、日本でいうところのマンションになります。
ヴィラ(戸建て住宅)に比べて初期投資額が少なく済むだけでなく、流動性が高く売買がしやすいため、投資家の間で人気があります。ドバイのアパートメントはモダンなデザインが多く、セキュリティやジム、プールなどの共用施設も充実しており、居住者の満足度が高いのも特徴です。
短期賃貸・長期賃貸のどちらにも対応できる柔軟性があり、Airbnbを活用した民泊運用も視野に入れた活用が可能です。価格帯が手頃なアパートメントは、投資回収期間が短く、リスク分散もしやすいため、初心者から経験者まで幅広い投資家に選ばれています。
スタジオタイプの価格相場・家賃相場
スタジオタイプは日本でいうワンルームに相当する間取りで、ドバイの不動産市場においてもっとも低価格で購入できる物件の一つです。立地や築年数にもよりますが、ドバイ市内でのスタジオタイプの物件は、おおよそ30万ディルハム(約1,200万円)前後から購入可能です。
スタジオタイプは単身者や短期滞在者からの需要が高く、年間を通じて安定した家賃収入が見込める点が魅力です。家賃相場は、郊外で月額3,000~5,000ディルハム(約12万~20万円)程度、中心部で月額5,000~8,000ディルハム(約20万円~32万円)程度で推移しており、利回りで見ると7~9%を狙えるケースも珍しくありません。
初期費用を抑えながらも、収益性を確保できるスタジオタイプは、限られた資金でドバイ不動産投資を始めたい方に最適な選択肢となります。また、ドバイでの一人暮らしを考えている人には、費用を抑えられる方法となるでしょう。
1ベッドルームの価格相場・家賃相場
1ベッドルームの物件は、スタジオタイプよりも広く、生活空間を分けたいカップルやビジネスパーソンに人気のある間取りです。日本でいうところの1LDKにあたり、寝室とリビングエリアが分かれているため、より快適な居住環境を実現できます。
このタイプの物件は、スタジオタイプよりも価格は高く、立地や設備によっては80万~150万ディルハム(約3,200万円~6,000万円)程度となっています。これがドバイの中心部や高級エリアになると、さらに高価格となり、億超えの物件も珍しくありません。
家賃もそれに応じて高くなり、月額5,000~8,000ディルハム(約20万~32万円)程度が一般的で、高級物件になるとさらに家賃は高くなります。
ビジネス街や鉄道駅に近いエリアでは、賃貸需要が非常に高く、空室リスクも低いため、安定した運用が期待できます。さらに、1ベッドルームは転売時にも人気があり、資産価値の維持や向上も見込めるため、長期的な投資としても有効な選択肢となります。
比較的安い物件が多いドバイの注目エリア
ドバイで不動産投資を検討する際、どのエリアに物件を購入するかは重要な判断ポイントです。「安くて将来性のある物件」を探す場合、エリアごとの開発状況やインフラの整備、住民層や賃貸需要といった要素を複合的に評価することが求められます。
ドバイには、発展途上ながら今後の成長が期待されている地域がいくつかあり、それらのエリアでは比較的安価に物件を取得できます。ここでは、比較的安めの物件が多いエリアを紹介します。
- インターナショナルシティ(International City)
- ドバイ・サウス(Dubai South)
- ジュメイラ・ビレッジ・サークル(JVC)
インターナショナルシティ(International City)
インターナショナルシティは、ドバイの中心地から車で20~30分の距離に位置しており、その名のとおり多国籍な住民が集まるエリアとして知られています。建物は「中国地区」や「イタリア地区」といったテーマ別に構成されており、文化的に多様な雰囲気が漂うのが特徴です。
このエリアは、ドバイの中でも手頃な価格で物件を購入できることで有名で、スタジオタイプのアパートメントなら25万~30万ディルハム(約1,000万~1,200万円)前後での購入も可能です。賃貸需要も高く、インド、パキスタン、フィリピン出身の居住者を中心とした単身者や低中所得層の外国人居住者から安定したニーズがあります。日用品や食料品が手に入るスーパーマーケットが多く、生活の利便性も高いため、長期的な賃貸運用にも適したエリアといえるでしょう。
ドバイ・サウス(Dubai South)
ドバイ・サウスは、2020年に開催されたドバイ万博の会場跡地を中心に開発が進んでいる新興エリアです。この地域は、ドバイ国際空港に代わって最大の国際空港になる予定のアール・マクトゥーム国際空港に隣接しており、今後の交通インフラの発展にも大きな期待が寄せられています。
政府はこのエリアを「未来都市」と位置付けており、商業施設、住宅エリア、物流ハブ、ビジネスパークなど多目的な都市機能を備えたスマートシティの形成を目指しています。物件価格は開発初期段階にあるため、他の成熟エリアと比べて割安で、スタジオタイプであれば35万~50万ディルハム(約1,400万~2,000万円)、1ベッドルームでも50万~80万ディルハム(約2,000万~3,600万円)での取得が可能です。
将来的にはエリアの成熟にともなって資産価値が上昇する可能性が高く、長期的なキャピタルゲインを視野に入れた投資先として注目されています。また、空港関係者や新興ビジネスの従業員など、特定の職業層からの賃貸需要も高まりつつあるため、インカムゲインの面でも期待が持てます。
ジュメイラ・ビレッジ・サークル(JVC)
ジュメイラ・ビレッジ・サークル(通称JVC)は、ドバイの中心部から車で約15~20分の場所に位置しており、都市の利便性と閑静な居住環境を両立させた地域として人気を集めています。このエリアは住宅地としての整備が進む一方で、ショッピングモール、学校、クリニック、公園などのインフラも充実しているのが特徴です。
JVCの不動産価格は、ダウンタウンやマリーナ地区に比べて抑えられており、スタジオで30万ディルハム(約1,200万円) 前後、1ベッドルームでも50万ディルハム(約2,000万円)程度で物件取得が可能です。若いカップルやファミリー層の居住ニーズも高いため、入居率が安定している点も魅力です。
JVCはアクセスの良さと生活利便性の高さから、住み替えや長期居住を希望する人々にも選ばれており、長期的に見て資産価値の向上も期待されています。
ドバイ不動産投資で押さえるべきポイント
ドバイは実際に住んでも良いのですが、不動産投資も魅力的です。最後に、ドバイにおける不動産投資で押さえるべきポイントについて解説します。
- 物件価格と利回りのバランスを考える
- 為替リスクを考慮する
- 自己資金を多めに用意する
- 信頼できるエージェントに依頼する
物件価格と利回りのバランスを考える
ドバイの不動産投資では、5~9%という非常に高い利回りが期待でき、他の主要都市と比較しても際立つ魅力があります。この高い利回りは投資家にとって大きな訴求力となり、安定した家賃収入を重視する方にとっては特に有利といえるでしょう。
表面利回りは、以下の式で求められるように、物件価格が安いと高くなります。
- 表面利回=家賃収入÷物件価格×100
ただし、物件選定は、物件の建つエリアの賃貸需要や将来的な資産価値の上昇を見込む必要があります。表面利回りだけに目を奪われると、空室の発生や物件価格の下落に苦しむリスクも考えられます。
投資対象の物件を選定する際は、立地の賃貸需要や入居者ニーズにあった間取り、適切な管理などの要素を総合的に評価し、長期的な視点で収益性を見極めるようにします。
為替リスクを考慮する
アラブ首長国連邦の通貨ディルハムは米ドルとペッグしているため、新興国に特有の通貨危機は起こりにくいとされています。しかし、外国通貨建てで資産を持つ場合には為替リスクが避けられず、リターンだけでなくリスクも冷静に見極める必要があります。
円安の時期に物件を購入し、円高の時期に売却すると、為替差損が発生する可能性があります。為替の変動は予測が難しいのですが、為替リスクに負けない収益性の確保が重要です。
自己資金を多めに用意する
海外不動産投資においては融資の審査が厳しいため、自己資金を多めに確保しておくようにします。ドバイでは、外国人投資家が現地で融資を受けること自体は可能ですが、金利が高めであったり、融資条件が厳しかったりする場合があります。そのため、自己資金を多めに用意し、融資に依存しない投資計画を立てましょう。
日本の金融機関の融資を利用して、ドバイの不動産を取得する方法もあります。日本国内の不動産を担保に設定する必要があるなど、一般的に融資審査が厳しく、金利も高めに設定されているため、利用する場合は慎重に判断するようにしましょう。
信頼できるエージェントに依頼する
ドバイでの不動産取引は、信頼できるエージェントに依頼するようにします。ドバイの不動産市場は急速に発展しており、法制度や市場動向が頻繁に変化しているため、現地の最新事情に精通したエージェントへの依頼がトラブル回避と投資成功への近道です。
信頼できるエージェントは、最新の市場情報を提供し、適切な物件選定や契約手続き、アフターサポートまで一貫して対応してくれます。エージェントの選定にあたっては、過去の実績や評判、提供するサービス内容を確認し、複数のエージェントとの面談をおすすめします。
まとめ
ドバイでは高級物件だけでなく、日本と比較して安い不動産も取得可能であることがわかります。より有利な物件を手に入れるためには、物件価格や利回りだけでなく、市場の成長性、エリアの特性、潜在的なリスクの理解が重要です。
ドバイの不動産市場は今後も成長が見込まれており、適切な投資判断によって長期的な資産形成が期待できます。ドバイ不動産投資を行う際には、最新の市場情報を収集し、専門家のアドバイスを得ながら、慎重に進めましょう。