ドバイは急激な経済成長を遂げ、最先端のビジネスハブとなることで、世界中のビジネスパーソンの注目を集めています。日本でも、IT起業家を中心としてドバイ移住を考えている人が増えています。
ドバイと聞くと「お金持ちの国」のイメージがあり、賃貸住宅であっても家賃が超高額なイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありません。根気よく探せば、東京と同程度の家賃の賃貸住宅も見つけることが可能です。
今回は、ドバイの賃貸住宅の基本情報、契約までの手順、賃貸借契約における注意すべき点、移住者に人気のエリアを解説します。
ドバイの賃貸住宅のタイプ
ドバイの賃貸住宅は、大きく「ホテルアパートメント」と「一般賃貸住宅」に分けることができます。ここでは、それぞれの概要について解説します。
ホテルアパートメント
ホテルアパートメントは、ホテルと同様の部屋に数週間単位、数ヶ月単位で滞在できるものです。料金(家賃)には電気、ガス、水道料金なども含まれています。ホテルのため、家具も電化製品もすべて揃っており、着替えの衣服や最低限のアメニティ以外用意すべきものは何もありません。
日本では「サービスアパートメント」として提供されているタイプのもので、国際的には「アパートメントホテル(apartment hotel)」と呼ばれています。
部屋にはキッチンが付属していることが一般的で、食事は自炊が基本です。洗濯・掃除などの家事も自分たちでこなします。リネン交換や居室内のクリーニングがセットになったサービスもあります。当然ではありますが、併設されたホテルのレストランで食事することもできます。
通常のホテルに宿泊するより1泊あたりの単価は安くなりますが、一般的な賃貸住宅の家賃よりは割高です。短期滞在の人、ビジネスに集中して生活まわりをまるごと外注したい人に向いているといえるでしょう。
一般賃貸住宅
ホテルアパートメント以外は、一般的な賃貸住宅(rental housing)です。日本でイメージする賃貸住宅と変わりありません。
ドバイの賃貸住宅には、「家具あり」と「家具なし」があります。家具ありは少し家賃が高めに設定されていますが、家具や電化製品を買い揃えなくてもよいことがメリットです。家具なしを選択すれば、多少なりとも家賃を節約できます。
一般賃貸住宅の種類
ドバイの一般賃貸住宅ですが、これも「アパートメント」と「ヴィラ」の2種類に分類できます。ここでは、アパートメントとヴィラについて解説します。
アパートメント
ドバイでいうアパートメント(apartment)は、共同住宅を指します。日本語の語感で「アパートメント」と聞くとやや安っぽいイメージになりますが、ドバイのアパートメントは日本の「マンション」に相当します。
アメリカやカナダでは、所有権のある分譲タイプの共同住宅をコンドミニアム(condominium)、賃貸タイプの共同住宅をアパートメントと分類していますが、ドバイでは分譲・賃貸ともにアパートメントとされています。
ヴィラ
ヴィラ(villa)は、土地付きの戸建て住宅を指します。
日本にも戸建て住宅の賃貸があるように、ドバイにもヴィラの賃貸住宅が存在し非常に人気があります。ドバイのヴィラは、日本の戸建て住宅より面積の広い物件が多く、ゆったりとしたつくりになっています。
ドバイでの賃貸借契約の流れ
ドバイの不動産に関する法律や商習慣は、日本と異なる点があります。契約の流れを知っていると、思わぬトラブルを回避できますので、覚えておくと便利でしょう。ここでは、ドバイで賃貸住宅を借りるときの契約の流れについて解説します。
- Webなどで物件を探す
- 不動産エージェントに連絡する
- 物件を内覧する
- オーナーと条件交渉する
- 賃貸借契約を締結する
- 物件の引き渡しを受ける
Webなどで物件を探す
賃貸物件を探す際は、日本でもまずは不動産ポータルサイトを検索することでしょう。ドバイでも、Webで賃貸物件を探すことが主流です。
物件に関する情報をすべて日本語で表示してくれるWebサイトもあります。いくつかのポータルサイトを見て、気になる物件を複数ピックアップしておきましょう。
不動産エージェントに連絡する
お気に入りの物件が見つかったら、不動産エージェントを通じてオーナー側に連絡します。
日本で賃貸住宅を探す際、仲介会社のことはあまり意識しないかもしれません。ドバイで物件を探す際は、信頼できる不動産エージェントに依頼するようにしましょう。
ドバイの不動産に関連する法律は、日本とは異なります。商習慣もまったく異なります。日本の感覚で契約を進めてしまうと思わぬトラブルに遭遇することがあります。特にドバイ初心者は、必ず日本人スタッフの在籍する信頼できるエージェントに依頼するようにします。
なお、ポータルサイトで見当をつけていた物件を依頼するエージェントが扱えるかどうかは保証できませんので、事前に相談するようにしてください。
物件を内覧する
不動産エージェントを通じてオーナー側にアポイントを取り、物件の内覧を行います。
日本では、物件を見ずに物件を決める人もいるようですが、ドバイでは必ず現物を見るようにしてください。特に、築年数が経過した物件では、思わぬ欠陥や臭気などもあります。内見・内覧を必ず行うようにしましょう。
オーナーと条件交渉する
家賃、契約期間、取り付けてある家具などについて、オーナー側と条件交渉ができる場合があります。たとえば、電子レンジが故障していた場合無償で修理してもらえるかどうかなどです。
セキュリティデポジットを支払う
借主は、セキュリティデポジットを支払います。これは、保証金の性質を持ったものであり、日本の敷金に相当します。セキュリティデポジットの支払いをもって、物件への正式な予約となります。相場は年間家賃の5~10%です。
セキュリティデポジットは、物件の退去時に原状回復費用(借主負担分)を差し引いて返金されます。この点も敷金と同じです。
賃貸借契約を締結する
賃貸借契約書と追加事項に関する契約書を作成し、貸主・借主双方が署名して正式に契約が成立します。契約書の書式は、ドバイ土地局が定めたものになります。借主は、契約書の内容を確認後、家賃を支払います。
物件の引き渡しを受ける
家賃の支払いが確認されると、物件の鍵、アクセスカード、契約書など関連する書類の引き渡しを受け、新居での生活が始まります。物件の引き渡し後、不動産エージェントへ手数料を支払います。
ドバイの賃貸住宅契約で注意すべき点
繰り返しになりますが、不動産に関連する法律や商習慣は日本とドバイでは大きく異なります。そのため、賃貸借契約においても注意すべき点があります。ここでは、ドバイの賃貸住宅契約に関する注意点について解説します。
契約期間
ドバイでは、賃貸借契約の期間は1年が一般的です。そして、1年ごとの更新(再契約)時に年間家賃を支払う形です。日本の普通借家契約では2年が一般的ですので、すぐに更新が到来する感覚になるかもしれません。
家賃の支払い方法
ドバイでは、家賃支払いは1年分前払いが原則です。日本では家賃は月額が標準ですが、ドバイでは1年分一括支払いとなりますので、その分まとまったお金を準備する必要があるでしょう。
家賃の支払い方法はオーナーによって多少異なりますが、現金や銀行振込、小切手、クレジットカードが使用可能です。ただ、小切手を利用することが一般的です。小切手を利用したことのない人は注意が必要です。
中途解約
賃貸借契約の期間は原則1年ですが、やむを得ない理由で急に帰国しなくてはならなくなることも発生するでしょう。その場合は、中途解約しなくてはなりません。
中途解約には、事前通知とペナルティ分の支払いが必要です。中途解約に関するルールは法律で決められてはいませんが、3ヶ月前までに事前通知し、2ヶ月分の家賃をペナルティとして支払う方法が一般的となっています。
例を挙げて解説します。2024年1月1日から2024年12月31日までの1年間、賃貸借契約を結んだとします。借主がどうしても日本に帰国せざるを得なくなったため、中途解約を決め2024年3月31日にオーナーに通知したとします。
このケースでは、借主は6月30日まで住むことができます。ペナルティは8月31日分までなので、その後9~12月の4ヶ月分の家賃相当額が返金されることになります。
この事例を日本に当てはめると、事実上3月31日に中途解約が可能で、4月1日以降の家賃は支払わなくても問題ありません。日本では借主の立場が守られる法体系になっていますが、ドバイではそうではないため注意が必要です。
ドバイの賃貸住宅で人気のエリア
日本に比べるとドバイは狭く、全体でも埼玉県ほどの面積です。それでもさまざまなエリアがあり、エリアごとの特徴があります。
エリア選びは賃貸物件探しのツボといえるでしょう。自分や家族のライフスタイルやビジネススタイルにあったエリアを選ぶことが重要です。最後に、ドバイの賃貸住宅で人気のエリアを紹介します。
- ドバイマリーナ
- ジュメイラビーチレジデンス
- ダウンタウン
- ドバイヒルズ
- アルバーシャ
- パームジュメイラ
ドバイマリーナ
ドバイマリーナは西側に位置し、高級なアパートメント・ヴィラが多くある新興住宅街です。美しい海沿いの景観や高層ビルが立ち並ぶ街並みがまさにドバイを象徴するような光景です。
エリアの中ほどにはマリーナモールがあり、生活用品や洋服、電化製品などの買い物も楽しめます。100社以上の日系企業が存在するジュベルアリフリーゾーン(JAFZA)が近くにあるため、日本人が多く住むエリアの一つです。
ジュメイラビーチレジデンス
ジュメイラビーチレジデンス(JBR)は、マリーナ地区のウォーターフロントにある高層住宅街です。海沿いのリゾート感があふれるエリアで、ビーチライフを楽しみたい人や観光スポットに近い場所に住みたい人におすすめといえます。日本人よりも西洋人が多く住んでいるエリアです。
ダウンタウン
ダウンタウンは、ドバイのど真ん中といえるエリアです。世界最大の商業施設・ドバイモールや世界一高い建物のブルジュハリファがあるため、ドバイに来た人は必ず訪れるエリアといっても過言ではありません。
ビジネスやエンターテインメントの施設が集まっているため、交通の便もよく、各企業の駐在員が多く住んでいます。物件はほとんどがアパートメントで、そのすべてがドバイ最大のデベロッパーであるエマール社によって開発された物件です。
ドバイヒルズ
ドバイヒルズは、ドバイ国際空港から南へ車で20分ほどの場所にある高級住宅街です。ゴルフ場や公園、街路樹などが多く、そのまわりを高級アパートメントやヴィラが取り囲んでいます。観光客が多く訪れるエリアではないため、非常に閑静なことが特長です。
アルバーシャ
アルバーシャはドバイ南部にある郊外地区。エミレーツモールや人工スキー場があることでも有名です。ドバイでもっとも多様性に富んだ地域といわれ、さまざまな国籍の人が住んでいます。家賃相場も比較的手頃になっています。
パームジュメイラ
パームジュメイラはドバイを象徴する人工島で、飛行機で上から見るとヤシの木の形になっていることが特徴です。
リゾート感あふれた高級物件が多いエリアとなり、豪奢なヴィラや高級アパートメントが立ち並びます。ドバイで最上級のラグジュアリーホテルやラウンジ、レストランもあり、家賃相場はドバイでもトップクラスとなります。
まとめ
ドバイの賃貸住宅について解説しました。
ホテルアパートメントを選ぶのか、アパートメントを選ぶのか、それともヴィラにするのか、さまざまな選択肢があります。
住むエリアにも、それぞれ特有や表情があります。ドバイに何を望むか、どんな生活を送りたいのかによって選択は変わります。皆さんのビジネススタイル、ライフスタイルにあった賃貸住宅を選び、最高のドバイライフを送ってください。