ドバイは、「世界最速で発展する都市」とも呼ばれ、めざましい経済成長が世界から注目されています。その経済成長と比例して、近年不動産価格も上昇を続けています。
ドバイの不動産価格は、実際どのように推移しているのでしょうか?今回は、統計データからドバイ不動産の価格推移を見ていきましょう。
※文中のAED(ディルハム)・円レートは、1AED=40円で計算しています。
急激に発展するドバイ経済
ドバイが世界中から注目されているのは、その急激な経済発展にあります。まずは、ドバイ経済の急成長の理由を解説します。
石油収入に依存しない経済政策
ドバイは、中東ペルシア湾の沿岸に位置し、一面砂漠の中にあります。
「中東」と聞くと、「石油」を思い起こす方が多いでしょう。ドバイの経済成長というのは石油輸出に依存した経済構造なのではないかと思ってしまいますが、決してそんなことはありません。
ドバイはアラブ首長国連邦(UAE)に加盟する一つの首長国ですが、それほど石油資源に恵まれていません。隣のアブダビは石油が潤沢に採れる産油地ですが、ドバイは石油埋蔵量が少なかったこともあり、早い段階から脱石油に舵を切り、産業の多角化を積極的に進めてきました。
貿易港であるジュベル・アリ地区をはじめ、30以上の地域にフリーゾーン(経済特区)を設置し、世界中から企業を呼び込みました。世界中から先端企業が集まるグローバル都市の始まりです。
ヒト・モノ・情報のビジネス・ハブになることで経済発展するのが、ドバイの成長戦略なのです。
世界有数の観光立国
ドバイが力を入れている産業の一つが観光です。
1965年のドバイ国際空港の開港、1985年のエミレーツ航空の設立など、観光立国に向けて着々と歩んだドバイは、2000年頃から一気に観光開発を進めることになります。
砂漠・海岸・灼熱の気候という天然の観光資源にプラスして、世界トップレベルの治安の良さ、高級なホテル・レストラン、世界最大級のショッピングモールやスーク(商店街)、高層ビル群の眺め等の人工観光資源を用意し、富裕層向けの観光都市となったのです。
2021年10月1日から2022年3月31日までの開催されたドバイ国際博覧会は、新型コロナウイルス感染症拡大によって1年延期を余儀なくされましたが、世界178ヶ国から総来場者数2,410万2,967人を集め、大盛況となりました。
ドバイ万博の成功は、コロナ禍に沈んだ観光業復活の狼煙となり、その後のドバイ急成長のきっかけともなるイベントとなりました。
資産家から熱い視線・タックスヘイブン
世界中の資産家、投資家、起業家が熱い視線をドバイに向ける最大の理由は、そのタックスヘイブン施策にあるといっても過言ではないでしょう。
ドバイ政府は世界の企業や富裕層から投資を呼び込むため、シンガポール・香港にならい、タックスヘイブン施策を採用しています。タックスヘイブンとは租税回避地のことで、法人税や所得税などの税金がまったくかからない、もしくはきわめて税率が低い国を指します。
ドバイでは、所得税、キャピタルゲイン税(譲渡所得税)、金融所得税、固定資産税、相続税、贈与税が無税です。住民税という概念もありません。
法人税はこれまで無税でしたが、2023年6月から9%課税されるようになりました。ただし、一定の要件をクリアすれば非課税になる優遇策もあります。また、日本の消費税に該当する付加価値税(VAT)が5%かかります。
ドバイに移住して、所得税・住民税などを非課税とするには、日本の非居住者とならなければなりません。また、相続税・贈与税を免れるためには、相当高いハードルをクリアする必要があります。法人の設立は、外国居住でも可能です。
最先端のビジネス・ハブ
グローバル都市であるドバイには、世界から金融やITの最先端企業が集まっています。特に、仮想通貨(暗号資産)に代表されるWeb3.0(ウェブスリー)の開発企業が多く集まり、エコシステムを形成していることが特長です。
Web3.0とは、ブロックチェーン技術によって実現される分散型インターネットで、次世代のIT技術体系として注目されている分野です。ブロックチェーン、仮想通貨、NFT(非代替性トークン)、DeFi(分散型金融)、DAO(分散型自律組織)、メタバースなどが新たなビジネスモデルとして登場しています。
Web3.0の中でも、仮想通貨は歓迎する国と拒否する国に分かれます。Web3.0技術が発展するには、仮想通貨を歓迎する国である必要があるでしょう。
ドバイ政府は、暗号資産規制局(VARA)とドバイ金融サービス局(DFSA)を設立し、仮想通貨ビジネスの明瞭な法的環境を確保しています。また、仮想通貨での支払いを採用するホテルやレストラン、スーパーもあります。
ドバイ不動産の魅力とメリット
ドバイ不動産の魅力とメリットはどんなところにあるのでしょうか?主なメリットは次のとおりです。
- 外国人でも不動産の購入が可能
- 治安が良い
- 税制が有利
- 不動産購入でビザの取得が可能
- 不動産価格が上昇している
- 積極的に都市開発計画を行っている
外国人でも不動産の購入が可能
海外には、外国人は不動産を購入できない法律がある国もあります。ドバイは世界中から富裕層やビジネスパーソンを集め、経済発展してきた経緯もあり、外国人に不動産の購入を認めています。
指定されたフリーホールドゾーン内であれば、外国人でも所有権付きの不動産が購入可能です。現地居住が条件ということもありません。非居住者も購入できます。
また、リースホールドゾーン内では使用権付き(99年後返還)の不動産が購入できます。
治安が良い
不動産の購入は、実際に居住する「実需目的」と、賃貸して家賃収入を稼ぐ「投資目的」の2種類があります。
実需目的となると、ドバイに移住してその不動産に住むことになりますが、移住先としての需要がないと不動産は人気になりません。その点、ドバイは移住先として国際的に注目されています。
人気の理由の一つとして、治安の良さが挙げられます。ドバイは、世界でトップレベルに治安の良い街です。Numbeo(ナムベオ)の都市別安全指数2023年版によると、ドバイは7位にランクインしています。日本も治安の良い国ですが、同調査によると東京が33位、大阪が106位です。
出典:Numbeo Safety Index by City2023
税制が有利
先述したように、ドバイは世界有数のタックスヘイブンとなっており、多額の資金が動く不動産の取引において有利に働きます。実需においても、投資においても有利な税制がドバイ不動産の人気の理由です。
一つの例として、不動産を売却したときのキャピタルゲイン税(譲渡所得税)について、日本と比較してみましょう。
賃貸して家賃収入を得るための投資物件として、5,000万円で購入したアパートメント(マンション)を4年後に1億円で売却したとしましょう。大きなキャピタルゲインが生まれますが、不動産価格が高騰しているドバイではそれほど珍しい例ではありません。
計算を簡単にするために、経費や手数料、減価償却を省略すると、1億円-5,000万円=5,000万円が譲渡所得となり、日本ではここに課税されます。4年後に売却であるため、短期譲渡所得に該当し、所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%、合計39.63%がかかる計算です。
計算すると、1,981万5,000円になります。5,000万円の売却益が出て喜んでいても、約2,000万円が税金で持っていかれてしまう計算です(なお、マイホームの場合は3,000万円の特別控除があるので、3,000万円まで非課税です)。
これが、ドバイでは無税です。完全にゼロです。
不動産購入でビザの取得が可能
実需でドバイ不動産の購入を考えている人には、不動産購入によってビザの取得が可能なことも嬉しいポイントです。
ドバイでは、長期滞在ビザにも数種類あり、一番長く滞在できるのが10年間滞在可能のゴールデンビザです。ゴールデンビザを取得する方法は複数あります。ドバイ政府もパフォーマンスの高い外国人に滞在してもらいたいと考えているため、要件は厳しめになっています。
ゴールデンビザの要件は職種によって異なり、投資家ビザでは200万AED(8,000万円)以上の預金を証明する書面の提出、納める税金が年間25万AED(1,000万円)を下回らないことなどが要件です。
他にも、専門家ビザ、起業家ビザ、優秀な学生ビザがありますが、不動産の購入によってもゴールデンビザの取得が可能になります。不動産のゴールデンビザは、次の3つの要件を満たすことが必要です。
- 200万AED(8,000万円)以上の不動産を購入する
- 購入先の不動産会社が政府指定の会社である
- 不動産を3年間以上保有する
ゴールデンビザの場合、アラブ首長国連邦外に6ヶ月以上滞在することもできます。ゴールデンビザを保持したまま、日本で生活することも問題ありません。
ただし、先述したように、ドバイのタックスヘイブンの恩恵を受けるには、日本の非居住者にならなければいけません。
不動産価格が上昇している
ドバイの経済発展と比例して、ドバイの不動産価格は上昇し続けています。ドバイの不動産価格の推移については、後ほど詳述します。
ここ数年、特にコロナ禍以降ドバイの不動産価格が高騰し続けているため、「ドバイ不動産はバブル」との意見が散見されます。では、本当にそうなのでしょうか?
スイスに本社を置く世界最大級の金融グループ・UBSは、毎年世界中の都市の不動産価格について評価をする「グローバル不動産バブル指数」を発表しています。この指数の2024年版でドバイの指数は0.64とされており、1を下回っているのです。同指数では「Moderate(適度)」と判断されており、少なくともバブルではないといえます。
ちなみに同指数で東京は1.67とされており、「High」という判断が下されています。
出典:Global Real Estate Bubble Index 2024
積極的に都市開発計画を行っている
ドバイが今日超近代的な都市に生まれ変わったのは、ドバイ政府による継続的な都市開発計画があったからといえます。ドバイ政府は今後も積極的な都市開発計画を実施する予定で、「ドバイ・都市マスタープラン 2040」を定めています。
都市計画の明確な目標があるため、不動産価格の上昇、賃貸需要の充実が見込まれ、不動産投資の基礎的条件が完備されていると考えられます。
統計から見るドバイの不動産価格の推移
実際にドバイの不動産価格の推移について、信頼できる統計データから確認しましょう。ドバイの不動産情報をレポートしている「DXB Interact」から、不動産価格の推移を確認します。
物件は、オフプラン物件(プレビルド物件)、レディプラン物件(完成物件)を合わせた全体を指します。また、エリアはドバイ全体です。
アパートメントの販売数の推移
アパートメント(マンション)で販売された物件総数の推移は次のとおりです。
2019年 | 27,300件 |
2020年 | 24,000件 |
2021年 | 39,500件 |
2022年 | 67,200件 |
2023年 | 99,300件 |
2024年(9月まで) | 109,800件 |
世界的に流行した新型コロナウイルス感染症はドバイでも猛威を奮ったため、2020年に不動産販売数は一回沈みました。しかし、その後、V字回復以上の回復をしていることが数字からわかります。ドバイ不動産市場の活況をよく示しています。
出典:DXB Interact
ヴィラの販売数の推移
ヴィラ(戸建て住宅)で販売された物件総数の推移は次のとおりです。
2019年 | 7,800件 |
2020年 | 7,300件 |
2021年 | 13,800件 |
2022年 | 18,500件 |
2023年 | 24,000件 |
2024年(9月まで) | 22,800件 |
ヴィラも、コロナ禍から急回復している様子が伺えます。
出典:DXB Interact
アパートメントの売上高の推移
アパートメントの売上高(=販売総数×物件価格)の推移は次のとおりです。
2019年 | 36,500,000,000AED |
2020年 | 30,100,000,000AED |
2021年 | 65,400,000,000AED |
2022年 | 129,700,000,000AED |
2023年 | 197,400,000,000AED |
2024年(9月まで) | 203,700,000,000AED |
アパートメントも、コロナ禍後の伸びがはっきりわかります。
出典:DXB Interact
ヴィラの売上高の推移
ヴィラの売上高の推移は次のとおりです。
2019年 | 20,500,000,000AED |
2020年 | 20,600,000,000AED |
2021年 | 46,600,000,000AED |
2022年 | 58,600,000,000AED |
2023年 | 113,400,000,000AED |
2024年(9月まで) | 113,000,000,000AED |
ヴィラの売上高については、コロナ禍の影響はほぼない状況です。ずっと右肩上がりに増え続けていることがわかります。
出典:DXB Interact
アパートメントのsqftあたりの物件価格の推移
アパートメントのsqft(フィート四方)あたりの物件価格の推移は次のとおりです。
2019年 | 1,283AED |
2020年 | 1,099AED |
2021年 | 1,187AED |
2022年 | 1,527AED |
2023年 | 1,519AED |
2024年(9月まで) | 1,635AED |
こちらもコロナ禍で一度落ち込んだ形ですが、その後ジリジリと高くなり、2024年は2020年の価格の60%高まで上昇しています。
出典:DXB Interact
ヴィラのsqftあたりの物件価格の推移
ヴィラのsqftあたりの物件価格の推移は次のとおりです。
2019年 | 697AED |
2020年 | 697AED |
2021年 | 807AED |
2022年 | 991AED |
2023年 | 1,125AED |
2024年(9月まで) | 1,335AED |
このところ、ヴィラの人気に火がついた形で、価格の伸び率が急角度になっています。
出典:DXB Interact
アパートメントの物件価格の推移
アパートメントの物件価格(全体価格)の推移は次のとおりです。
2019年 | 981,850AED |
2020年 | 886,186AED |
2021年 | 1,023,084AED |
2022年 | 1,242,888AED |
2023年 | 1,231,861AED |
2024年(9月まで) | 1,279,000AED |
こちらも、コロナ禍以降、右肩上がりで価格が上昇していることがわかります。
出典:DXB Interact
ヴィラの物件価格の推移
ヴィラの物件価格の推移は次のとおりです。
2019年 | 1,685,777AED |
2020年 | 1,779,680AED |
2021年 | 2,180,000AED |
2022年 | 2,005,000AED |
2023年 | 2,820,000AED |
2024年(9月まで) | 3,167,888AED |
こちらも価格上昇が著しく、ヴィラが高嶺の花になりつつある様子がわかります。
出典:DXB Interact
まとめ
ドバイはその奇跡的な経済の急成長に比例して、不動産価格も急上昇してきました。その事実は、統計データを見ても、数字がはっきり証明しています。 これだけの上昇ぶりを示しても、専門家はドバイ不動産がまだまだ成長すると見込んでいるのです。