昨今、サウジアラビアは建国以来最大ともいえる社会・経済の変革期を迎えています。今回は、リヤドやジッダなど主要都市の最新相場から、投資のメリット・リスク、将来の展望まで、投資家が知っておくべき要点を専門的な視点から解説します。
※文中のサウジ・リヤル・円レートは、1サウジ・リヤル=40円で計算しています。
「ドバイの次」として注目されるサウジアラビア不動産市場の特徴
中東における不動産投資の成功例といえば、ドバイがその代名詞でした。しかし、現在、世界の投資家が熱い視線を注いでいるのは、その隣国であるサウジアラビアです。ここでは、サウジアラビア不動産市場の特徴を解説します。
- 都市開発が価格上昇圧力になる構造になっている
- 外国人投資資金の流入が増加している
- 国家戦略によって市場が拡大している
都市開発が価格上昇圧力になる構造になっている
サウジアラビア政府は、非石油部門のGDP寄与度を高めるため、観光、テクノロジー、物流などの新産業に巨額の予算を投じています。
政府系ファンドであるパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)が主導する都市開発は、産業と雇用を創出し、国内外からの人口流入を通じて住宅需要を急増させています。その結果、供給が追いつかない状況が生まれ、都市部の不動産価格を押し上げる要因となっています。
外国人投資資金の流入が増加している
非サウジアラビア人による不動産所有をめぐる規制は段階的に緩和され、不動産取引のデジタル化や所有権に関する法整備も進展しています。機関投資家から個人投資家まで参入しやすい環境が整い、市場の透明性は大きく向上しました。
特定の制限区域を除き、居住者・非居住者を問わず投資が可能となりました。国際的な流動性が高まり、ドバイなどで実績を積んだ投資家が次の成長市場としてサウジアラビアに資本を移す動きも見られます。
国家戦略によって市場が拡大している
サウジアラビアは「ビジョン2030」を軸に、インフラ整備と法規制の近代化を同時に進めており、市場拡大の蓋然性が高いと評価されています。
開発途上エリアや未整備ゾーンで物件を取得し、インフラ整備や人口流入に伴う価値上昇を狙う投資戦略が有効な選択肢となっています。
主要都市別のサウジアラビア不動産価格
サウジアラビアの不動産市場を理解するうえでは、主要都市ごとの役割と需要構造の把握が重要です。ここでは、主要都市別のサウジアラビア不動産価格について解説します。
- リヤド
- ジッダ
- ダンマーム/東部州
リヤド
首都リヤドは、外資系企業に中東拠点の設置を促す「HQプログラム」により、外国人駐在員の流入が進んでいます。
北部の高級住宅地やキング・アブドラ・ファイナンシャル・ディストリクト(KAFD)周辺では、賃料・販売価格ともに上昇基調が続いており、キャピタルゲインを狙う投資家にとって最重要エリアといえます。
ジッダ
「紅海プロジェクト」を中心とする観光開発により、リゾート・観光需要の拡大が見込まれています。メッカの玄関口としての安定需要もあり、価格変動は比較的緩やかで、中長期の賃貸経営に適した市場です。
ダンマーム/東部州
東部州は石油・化学産業を基盤とする産業集積地で、法人需要や実務者の居住需要が中心です。大幅な値上がりは見込みにくいものの、稼働率が安定しており、インカムゲイン重視の長期投資に向いたエリアといえます。
物件タイプ別のサウジアラビア不動産の特徴と価格比較
投資の成否は、都市選びだけでなく、どの物件タイプを選択するかにも大きく依存します。
ここでは、物件タイプ別のサウジアラビア不動産の特徴と価格相場を解説します。
- アパートメント
- ヴィラ(戸建て住宅)
- オフプラン(未完成物件)
- レディプラン(完成物件)
アパートメント
サウジアラビアの若年層の増加や外国人駐在員、出稼ぎ労働者の流入により、もっとも需要が伸びているのがアパートメントです。
核家族化や単身者の増加に伴い、都市部でのマンション暮らしが一般的になりつつあります。アパートメントは流動性が高く、売却時に買い手が見つけやすいため、外国人投資家にとっては最初のエントリーとして最適です。
ただし、物件ごとの管理状態によって将来的な資産価値に大きな差が出るため、信頼できる管理会社の存在が重要になります。
アパートメントの価格相場は、リヤドで1平方メートルあたり6,500サウジ・リヤル(約26万円)、ジッダで4,400サウジ・リヤル(約17万6,000円)、ダンマームで3,500サウジ・リヤル(約14万円)です。
居室の面積を150平方メートルと仮定すると、リヤドで約3,900万円、ジッダで約2,640万円、ダンマームで約2,100万円です。
ヴィラ(戸建て住宅)
伝統的なサウジアラビアの家庭において、ヴィラは依然としてステータスの象徴であり、大家族での居住を好む層からの根強い需要があります。一区画あたりの土地面積が広いため、土地価格の上昇に伴う資産価値の増加を直接的に享受できる点がメリットです。
一方で、アパートメントに比べると購入価格が高額になり、売却先も主にローカルの富裕層に限られるため、現金化までの期間が長くなる傾向があります。希少性の高い立地のヴィラを長期保有し、大幅な値上がりを待つ戦略が一般的です。
ヴィラの価格相場は、リヤドで1平方メートルあたり6,800サウジ・リヤル(約27万2,000円)、ジッダで6,600サウジ・リヤル(約26万4,000円)、ダンマームで4,900サウジ・リヤル(約19万6,000円)です。
居室の面積を300平方メートルと仮定すると、リヤドで約8,160万円、ジッダで約7,920万円、ダンマームで約5,880万円です。
オフプラン(未完成物件)
建設開始前、あるいは建設途中の段階で購入するオフプラン物件は、完成済みの物件に比べて安価に設定されていることが多く、完成までの期間に市場価格が上昇すれば大きな利益が期待できます。
一方で、建設の遅延や完成時のクオリティが当初の計画と異なるリスク、さらにはデベロッパーの倒産リスクなども考慮しなければなりません。実績のある大手デベロッパーの案件を厳選することが、リスク低減の鉄則です。
レディプラン(完成物件)
すでに建物が完成しているレディプラン物件は、実際の建物や周辺環境を確認した上で購入できるため、投資判断の精度を高められます。購入後すぐに賃貸に出して、キャッシュフローを得ることも可能です。
オフプランのようなキャピタルゲインは期待できませんが、リヤドの中心部など、すでに需要が確立されているエリアでのレディ物件は、資産防衛の観点からも有効な選択肢となります。
サウジアラビア不動産価格の推移と今後の見通し
過去のデータと現在の経済情勢を照らし合わせると、サウジアラビア市場が今どのような位置にいるのかが見えてきます。ここでは、サウジアラビア不動産価格の推移と、今後の見通しについて解説します。
これまでの価格の動き
数年前まで、サウジアラビアの不動産市場は原油価格の変動に連動する傾向がありました。しかし、「ビジョン2030」の本格始動後は、その相関関係が弱まり、国内の政策要因やプロジェクトの進捗が価格を左右するようになっています。
現在は、期待感だけでなく、実際のオフィス稼働率や住宅不足といった実数にもとづいた上昇へとシフトしています。
今後の価格予測は「3シナリオ」で見る
新興市場であるサウジアラビアへの投資を検討する際、単一の予測に頼るのは危険です。外部環境やプロジェクトの進捗に応じて、複数のシナリオを想定しておく必要があります。
強気シナリオ
グローバル企業の地域本社移転が加速し、2030年の万博開催や2034年のワールドカップ開催に向けたインフラ整備が滞りなく進むケースです。
この場合、リヤドなどの主要都市は世界的なメトロポリスへと変貌し、不動産価格は現在のドバイや他の先進諸国に近い水準まで急騰する可能性があります。深刻な住宅供給不足が続き、賃料水準も一段と切り上がることで、キャピタルとインカムの両面で記録的なリターンが期待できるでしょう。
中立シナリオ
プロジェクトの進捗に多少の遅れが生じつつも、着実な人口増加と経済成長が続くケースです。
供給量も段階的に増えていくため、価格の上昇は緩やかになり、市場はより成熟した安定期へと移行します。法整備や税制の透明性が高まり、長期的な資産保有を目的とした機関投資家の参入が増え、中東地域における安全資産としての地位を確立するシナリオです。
弱気シナリオ
世界的な景気後退や原油価格の長期低迷、あるいは地政学的な緊張の高まりにより、政府の予算執行が滞り、メガプロジェクトの規模縮小や遅延が相次ぐケースです。
一時的な期待で買い進まれていたエリアでは価格調整が起こり、流動性が低下する恐れがあります。このようなリスクに備え、過度なレバレッジを避け、余裕のある資金計画を立てることが重要となります。
NEOMなど巨大都市計画には慎重な姿勢が必要
サウジアラビア変革の象徴である「NEOM(ネオム)」は世界的な注目を集めていますが、投資対象としては冷静な判断が求められます。NEOMは「ビジョン2030」の柱となる超巨大スマートシティ構想である一方、事業計画の見直しにより一部プロジェクトの縮小や優先順位の変更も進んでいます。
既存都市とは異なる概念で建設されるため、実需がいつ、どの規模で立ち上がるかを見通すのは容易ではありません。
サウジアラビア不動産投資のメリット
サウジアラビアの不動産市場がこれほどまでに注目されるのは、他国にはない圧倒的なメリットが存在するからです。ここでは、サウジアラビア不動産投資のメリットについて解説します。
- 価格が国際水準に近づく余地がある
- 国家主導の需要創出がある
- 内需の厚みが圧倒的
- ポートフォリオの分散になる
価格が国際水準に近づく余地がある
世界的な大都市であるロンドン、ニューヨーク、シンガポールなどと比較した場合、サウジアラビアの主要都市の不動産単価は依然として割安な状態にあります。先行する中東のドバイと比較しても同様です。
G20の一角を占める経済規模を持ちながら、不動産価格がまだ発展途上の段階にあるということは、今後の経済成長に伴う「価格のキャッチアップ」が期待できることを意味します。国際的な基準に照らし合わせれば、上昇余地は非常に大きいといえるでしょう。
国家主導の需要創出がある
自由競争のみに任せられた市場とは異なり、サウジアラビアでは政府が自ら産業を興し、需要を創り出しています。政府が特定のエリアに予算を集中させれば、そこには必然的にインフラが整い、人が集まります。
「官製相場」ともいえる構造は、投資家にとって予測可能性を高める要因となります。国家がバックアップしているプロジェクト周辺の物件は、価格の下支えが強く、暴落のリスクを一定程度抑えられるという安心感があります。
内需の厚みが圧倒的
ドバイなどの他の湾岸都市との最大の違いは、人口規模と年齢構成です。サウジアラビアは約3,600万人の人口を抱え、その多くが30代以下の若年層です。
若年層が今後家庭を持ち、住宅を購入するという局面を迎えるため、外国人投資家が引き揚げたとしても市場が崩壊しにくい強さを持っています。自国民向けの住宅支援策も充実しており、安定した流通市場が形成されていることは、投資の出口を考える上で大きな強みとなります。
ポートフォリオの分散になる
資産運用において、特定の国や地域に資金を集中させるのはリスクです。すでに欧米や日本、新興国に投資している場合、独自の経済サイクルを持つサウジアラビアをポートフォリオに加えることで、全体のリスク分散を図ることができます。
米ドルとの固定相場制(ペッグ制)を採用しているサウジアラビアの資産は、ドル資産としての性質も持ち合わせているため、通貨分散の観点からも検討に値します。
サウジアラビア不動産投資のリスク
高いリターンを狙うためには、それ相応のリスクを正確に評価し、管理しなければなりません。最後に、サウジアラビア不動産投資のリスクについて解説します。
- 制度・規制変更リスク
- 為替リスク
- 地政学リスク
制度・規制変更リスク
サウジアラビアの法整備は急ピッチで進んでいますが、それは同時にルールが頻繁に変わる可能性も意味します。外国人による不動産所有のルールや、特定のゾーンに関する規制、税制などが政府の方針一つで変更されるリスクがあるのです。
現地の最新情報をつねにアップデートし、柔軟に対応できる体制を整えておく必要があります。
為替リスク
サウジ・リヤルは米ドルとのペッグ制を採用しているため、新興国にありがちな通貨危機のリスクは極めて低いと見られています。しかし、日本から投資を行う場合は、円・ドル相場の影響を直接受けます。
現在歴史的な円安水準であるため、将来的に円高に振れた際には、為替差損が発生する可能性がある点は無視できません。
地政学リスク
中東地域は、国際情勢の変化による影響を受けやすいエリアです。サウジアラビア自身は安定を維持していますが、周辺諸国の紛争や対立が激化した際、投資心理の悪化から市場が一時的に冷え込む可能性があります。
中長期的な視点では克服できるリスクであっても、短期的には価格や流動性に影響を与える可能性があります。
流動性不足
市場が拡大しているとはいえ、中古物件の流通市場はまだ発展途上です。外国人にとって魅力的な高級物件や特定エリアの物件は、買い手が限られる場合があります。
急な資金化が必要になった際に、希望する価格ですぐに売却できないリスクがあるため、余裕を持った運用期間を設定し、出口戦略をあらかじめ描いておく必要があります。
まとめ
サウジアラビア不動産市場は、「眠れる獅子が目覚めた」直後のような、エネルギーに満ちあふれた状態にあります。たしかに新興国特有の不透明さやリスクは存在しますが、国家が明確なビジョンを持って推進するこの巨大な市場には、それを補って余りあるポテンシャルが秘められています。
さらに詳しい物件情報や、具体的な購入手続きの流れについて知りたい場合は、当サイト「ドバイ不動産投資ガイドfor日本人」までお問い合わせください。日本人のスタッフが中心となって対応いたしますので、英語に自信がない方や中東の事情に詳しくない方でも、安心してご利用いただけます。少しでもご興味をお持ちの方は、ぜひお問い合わせをお待ちしております。

